中国企業でのインターン生活は
快適だったけれど…

 この会社の仮の社名をZ社としよう。李君は、Z社のインターンシップにエントリーするや、即座に深センの本社に招聘され米国を出国。その後、国際事業部に配属され、本採用後は幹部候補生としてエンジニアリング部門のプロジェクト・マネジャーを任されるという説明を受け、トレーニングが始まった。李君はその後の様子をこう語ってくれた。

「主なトレーニングの内容は、コンピュータールームで発生する問題解決に当たることでした。このとき、クラウドルームの中にも入りました。パスポートを提示し、何重ものセキュリティチェックを受けました。天井には無数の監視カメラが設置されていて、とても厳重な警備体制でした」

 Z社の国際事業部がインターンシップとして受け入れた大卒者は、日米欧韓に留学経験を持つわずか数名だったという。この“選ばれし精鋭たち”のインターンシップは約2ヵ月に及んだ。その間、インターン生たちは深センでの生活を経験する。李君は次のように振り返る。

「エンジニアの僕は、当初はネット環境にかかる制限にはとても抵抗を感じましたが、徐々にフェイスブックやグーグルが使えない環境にも慣れてしまいました。そもそも、サーバーにつなぐのが面倒だし、やがてはサーバーを使って外の情報を取りにいくこともなくなってきました。周囲の友達もフェイスブックは使っていなかったので、『微信(WeChat)さえあればいいか』という心境に変わっていったのです。微信があれば財布も必要ないし、アプリで何でも取り寄せることができる生活は、実に便利でした」

 李君のインターンシップ先だったZ社はBATHのひとつであることは述べたが、これらは民営企業でありながら、国家戦略にのっとって海外市場制覇を積極的に進める先端企業である。欧米や日本をはじめとする先進国市場への進出に力を入れているため、彼のような「スキル+言語+経験」の三拍子がそろった人材は、喉から手が出るほど欲しい。

 しかし、李君は結局、Z社の採用を辞退してしまった。