その場合、時給が上がると従来より短い労働時間で130万円の壁に達してしまうので、働く時間が短くなる可能性がある。
一般の非正規労働者も、「生活に必要な資金を稼いだら、あとは働かずに好きなことをしたい」と考える場合には、時給が上がると働く時間が短くなるだろう。
筆者の個人的な希望として、学生諸君には「アルバイトは必要最低限の生活費稼ぎにとどめて、残った時間は勉強したまえ」と言いたいところだが(笑)。
正社員も、残業代より余暇が欲しい?
サラリーマンの働き方改革が進むと、さらなる労働力不足を招く可能性もある。サラリーマンたちが「残業代より余暇が欲しい」と考えているならば、企業としては社員の残業削減が労働力確保に重要となるからだ。
現在の中高年社員は、いまだに年功序列賃金制の下で働く人が多く、多少残業が長くても転職したいとは思わないかもしれない。しかし、若手社員の転職防止や新卒採用のためには「残業が少ない」ことをアピールする必要がある。
とはいえ、「仕事を効率化して残業を減らす」ことは容易ではない。それができるのなら、昔から効率的に仕事をしていたはずだ。
したがって、社員が残業しなくなった分は、社員数を増やして対応せざるを得ない。同じだけの労働量を多くの人数が分け合って処理するようになる。
その分だけ多くの採用を行うとすれば、それが労働力の需要を増やし、マクロ的な労働力不足を加速させる恐れがある。