烏賊の干物が鯣と呼ばれるようになったのは、室町時代中期頃からで、墨群《すみむれ》が短縮されたのだろうと言われています。

 鯣を「あたりめ」と呼ぶ場合があるのは、江戸時代の博打場で出目を狙う際、鯣は「掏《す》る目」に通じて縁起が悪いため、「当たり目」と呼び変えた名残です。

 祝い事にも鯣は欠かせず、特に婚礼の際は、鯣は「寿留女」と当て字で表せることから、末永く幸せに、婚家に留まる女になるように、との願いがかけられました。

烏賊墨煮
【材料】烏賊…1杯/酒…大さじ1/味噌…大さじ1
【作り方】①烏賊は洗ってワタとスミを抜いておき、内臓と軟骨を取り去って1cm幅の輪切りにする。足は2本ずつに切り分ける。②鍋に烏賊のワタとスミをしごき出し、酒と味噌を加えて弱火にかけ、2~3分練りながら煮る。③1を加えて3分程度混ぜながら煮る。

 また大相撲の場所前に行われる地霊祭では、土俵中央に「鎮物《しずめもの》」として、洗米・塩・昆布・勝栗・鯣の五品が埋められます。

 ここでは、鯣が半永久的に傷まないことから、代々の繁栄を願ったものと思われます。

 ちなみに江戸時代初頭、鯣は中国に輸出されており、幕末には函館経由で欧米に輸出されていたと記録されています。


 次に「塩辛」ですが、江戸時代中期、大量に獲れすぎた烏賊を保存するため、塩漬けにしたことが始まりです。

 塩だけだと塩辛くなりすぎるので、麹を加えて甘みを出したところ好評で、これが珍味として全国に広がりました。

 戦後は麹を使わず、ワタで和えた塩辛が主流になりましたが、こちらは元は三陸地方の名産品だったそうです。

赤烏賊の酢味噌和え
【材料】赤烏賊(刺身用)…1/2パック/わけぎ…2本/切り昆布…20g/白味噌…大さじ2/砂糖…小さじ/酢…小さじ1
【作り方】①赤烏賊は薄造りにし、わけぎは熱湯でさっと茹でて冷水に取り、3~4cm幅に切って水気を絞る。切り昆布は5cmほどの長さに切り、器に盛る。②白味噌、砂糖、酢をよく混ぜて器に添える。


 長野県の名産品に、「塩いか」もしくは「塩丸いか」という商品があります。

 内臓と目と口を取り除き、茹でて塩漬けにした加工品で、昔は全国的に流通していたようです。

 筆者が10年近く松本市に住んでいた頃、よくこの「塩丸いか」をいただきました。

 水に漬けて適度なしょっぱさになるまで塩抜きをし、薄く切って、スライスした胡瓜とおろし生姜で和えていただくのですが、なんともいえない旨みがあり、特に夏には欠かせない一品でした。

 なぜこんなにおいしい(しかも安価な)塩烏賊が廃れてしまったのか、不思議です。