江戸っ子好みの二八蕎麦に江戸の昔の“煮ぬき汁”といわれた「江戸つゆ」を現代風に再現。ほろほろ鳥の卵で味わう「すき焼き蕎麦」は斬新。向島料亭の女将が立ち上げた蕎麦屋は昔と今の味わいで客をもてなす。スカイツリーの下で江戸蕎麦を粋に楽しみたい。

花街、向島の見番通りの裏筋の蕎麦屋
しっとりした情緒ある雰囲気に酔う

 待ちに待った東京スカイツリーが開業した。駅名は業平橋から東京スカイツリー駅と変わって、このあたりは一挙に観光スポットになり、大きな人波が押し寄せるようになっている。

 その新駅から、巨大なスカイツリーを背にして向島方面に歩いて行く。昭和の40年代初め、向島界隈は料亭が90店もあり、粋な向島芸者や旦那衆が歩く、大きな花街だった。少なくなったとはいえ、今でも料亭はこのあたりに15店舗はあり、都内では一番大きな規模の花街だ。

 隅田川沿いに伸びる墨堤通りと、向島の中央を貫く国道6号線の間に、見番通りと呼ばれる道路がある。見番とは芸妓の取次ぎなどの役割をする事務所のことだ。現在は住宅街と思しきところだが、その歴史を知ると、そこはかとなく、花街の色香があるように感じる。

「向島七福 すずめの御宿」。2010年12月に開店。(写真左)昔ながらの粋な家屋を蕎麦屋に改造。しっとりした風情が全体に漂う佇まいだ。(写真右)外玄関から内玄関の渡りは江戸の情緒を表現した造作になっている。

 その見番通りから一本入った路地にあるのが「向島七福 すずめの御宿」だ。駅からは歩いて10分ほど。周囲は落ち着いた大人の町だ。

「この花街に合う、この街ならではの蕎麦屋を造りたかったんです」と話すのは女将の藤田知子さん。すぐそばに料亭「すみ多」を経営する二代目女将で、この「すずめの御宿」を今から1年半ほど前の2010年12月に立ち上げた。

 料亭の女将が立ち上げた蕎麦屋だけに、門構えからして、これまでの蕎麦屋には無いしっとりした情緒がある。外玄関を潜るとすぐに蕎麦の打ち場があって、蕎麦職人の仕事が見ることができる。

 店は間仕切りの個室部屋が2つあって、それとは別に4人掛けテーブル席と2人掛けテーブル席が数席あって、混みあってもゆとりのあるような間取りになっている。

(写真左)ゆったりとしたテーブルの配置にカバー掛けの椅子。落ち着いた空間が広がる。大人たちが会食に接待に蕎麦屋酒を楽しめる店だ。(写真右)個室は2部屋用意されていて、平日のお昼にも徳利を傾ける客が多いという。