ここで注意してほしいのは、できない人を本質的に“できる人”に変えているわけではない、ということです(“できる”ように変えるのは、本人の意思や行動が必要ですが、それはリーダーが請け負う範疇を超えています。この点は後述します)。

 同時に、できない人というのは“何か”の気づきを与えてくれます。

 先ほどのAさんのケースでいえば、緑ピーマンと赤ピーマンがごちゃ混ぜに入っていても、色覚障害の人でない限り、区別して盛りつけることはできます。でも、別々の容器に入っていたほうが、誰でも効率よく作業がしやすいのです。みなさんもそう思いませんか?

 つまり、大多数のケースにおいて、人は“できる側”に立ちます。“できる側”の人は知らず知らずのうちに、作業をこなすために何らかのコストを負担しているということです。

 できる人はわずかながらもそれらの行為を負担に感じるのですが、できない人がその負担を顕在化させます。それにより、「確かにこれは負担だ」と気づくことができ、「そもそも負担をなくすためにはどうすればいいか」と工夫を凝らし、使いやすい仕組みができていくのです。

「できない人ほど気づきをくれる」というのは、よく耳にする言葉ですが、精神論ではなく、具体的にどんな気づきをくれるのか、まで落とし込んでいくと、日常業務では見落としていた大事なことに気づくことができるのだと思います。

できない人に対して
イライラする原因は何か?

「なぜ、この人はこんなにできないのだろう…」

 誰かと共に作業していると、イライラすることがあるでしょう。相手が頑張ってくれているのにイライラする理由は、ひとえに「相手への期待値がつり上がっているから」です。でも、「誰とでも一緒にやっていこう」と思っているのであれば、イライラして精神を消耗することは得策ではありません。

 相手への期待値がつり上がる原因には、2つあります。1つは、自分に余裕がないケースです。気持ちに余裕がある時は、相手が要領を得なくても「ゆっくりやってくれたらいいんだよ」と鷹揚に構えていられます。ところが、余裕がなくなってしまうと「なんでこんなことを聞いてくるんだ」「なんでこんなに時間がかかるんだ!」とイライラしてしまうのです。

 そしてもう1つのイライラの原因が、相手が思うように成長しないケースです。

 皆さんの職場でもあると思いますが、何度言ってもミスをする相手に、イライラしてしまうことがあるでしょう。そんな時は、視点を変えればいいのだと、私は気づきました。

「どうしてこんなこともできないんだ!?」と思う前に、「自分がやることをやったら、後は相手の責任」という事実に気づくということです。

 熱心であればあるほど、教える側のあなたは、相手の成長にやきもきするものですよね。でも冷静に考えれば、あなたは相手を成長させるための道を先導しただけにすぎません。成長するペースはその人自身が決めることです。ですから相手が成長する進捗具合はあなた自身が思い描くようなシナリオにならないのはいうまでもありません。