ジェットスター「パイロット有給取得で欠航」の裏に大量移籍の噂Photo:JIJI

 「パイロット大量移籍のうわさ、本当かもしれないな」

 6月3日、LCC(格安航空)大手のジェットスター・ジャパンがパイロットの体調不良や有給休暇取得を理由に、国内・国際線合計27往復54便を減便すると発表した。すでに欠航した分も合わせると約7500人に影響が出るもようだ。この一報を耳にした航空業界関係者の頭に浮かんだのは、「日本航空(JAL)が新設するLCCのZIPAIR(ジップエア)に、ジェットスター・ジャパンのパイロットが15人程度移籍するらしい」という、LCC界隈で持ちきりのうわさだ。

 ジップエアは9月末から乗員訓練を開始する見込み。となると他社から移籍するパイロットは8月末には勤務先を退職することになる。冒頭の業界関係者は「体調不良に加えて有給取得が重なったのは、退職前の有給消化ではないか」と推察したのである。

噂と大量欠航の関連性は否定

 ジェットスター・ジャパンは、うわさの内容と計画減便の関連性を否定している。

 同社によると、4月から5月にかけ、特に10連休の増便もある中でパイロットの体調不良が相次いだこと、訓練生から副操縦士への養成訓練が長期化していることが重なり、乗員繰りが極めてタイトになっていた。同社は6月が期末のため、駆け込みの有給申請が通常以上に多かった。そうした事情から、7、8月の繁忙期を前にしわ寄せを解消するために減便に踏み切ったということだ。

 大量移籍のうわさ自体については「人材の流動性が高まっているのは確かで、出ていく人もいれば入ってくる人もいる。採用は計画通り進んでいる」(同社)とし、運航人員体制の見通しへの懸念を払った。「7月以降は計画通りに運航する」という。

 ジェットスター・ジャパンは現在、国内22路線、国際7路線を飛ばしている。機長87人、副操縦士76人、それに訓練生を含めると200人以上の体制。2018年6月末時点での同体制は188人で、昨年と比べれば増加している。もっとも、路線網を意欲的に拡大中なので、パイロット数に余裕はないだろう。

 2012年に就航したジェットスター・ジャパンは、他のLCCと同様に、破綻したJALから機長や指導教官を引っ張ってきた。今でもJAL出身のパイロットが多数在籍。彼らの高齢化が進んでおり、引退する前に新たな人材を確保することが経営課題となっている。

 そこで他社から現役機長や現役副操縦士を引き抜く人材確保から、自社養成の強化へシフトし始めている。副操縦士から機長への昇格プログラムや、副操縦士養成(航空大学校や私立大学の専門学科からの採用)を実施し、昨年夏には自社の養成課程で訓練生から副操縦士に昇格した第一期生が4人誕生した。