新薬の社会的価値とは

 高額薬剤が相次ぐ一方、社会保障関係費(19年度予算は過去最高の34兆円)の伸びを抑えようと、国は近年、薬剤費を狙い撃ちにしている。

 具体的には原則2年に1度だった薬価引き下げを毎年改定にし、新薬に対する薬価の優遇制度を見直した。オプジーボの適応症が拡大して、「医療財政が破綻するのでは」と騒がれた際は、ルール外の緊急引き下げを強行した。

「多額の開発費を投じた画期的新薬すら評価しないのか」。創薬に自信がある大手を中心に製薬会社は不満たらたらだ。

 業界団体の日本製薬工業協会(製薬協、会長=中山讓治・第一三共会長)は一つの解として、これまで算定基準になかった、「画期的新薬の『社会的価値』」を薬価に織り込んでもらえるよう、国などに働きかけを始めている。

 画期的新薬の登場で不治の病が治ったり、健康寿命が延びたり、長期間の入院・看護が不要になったりした結果、労働生産人口を増やすなどのプラス面があることを評価してもらおうというわけだ。中山会長は「単年度の社会保障コストの発想だけで医薬品は見られてきた。中長期的な観点に欠けていた」と言う。

 今年1月に発表した製薬協の提言資料には、「イノベーションの成果である医薬品は社会的コストではなく、重要な社会インフラと位置付けるべき」と記されている。

 一見納得感はある。だが、この社会的価値をどう評価するかとなると、現状のところ答えは見つかっていない。

(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)