国内初のCAR-T細胞療法となるがん治療薬「キムリア」が今春承認され、5月22日から公的保険が適用された。1回のみの投与で効果が期待されるが、複雑な製造工程を要し、この1回の治療費が驚くほど高い。17年に承認された米国では5000万円超、日本では過去最高の3349万円の薬価が付いた。技術革新により高額な薬剤は増え続ける見通しで、このままだと支払い側はパンクする。製薬メーカー側はこの問題にどう向き合うのか。キムリアを製造販売するスイス製薬大手ノバルティスのオンコロジージャパン・プレジデント、ブライアン・グラッツデン氏を直撃した。(聞き手/ダイヤモンド編集部 臼井真粧美、土本匡孝)
――従来の治療法が効かない一部の血液がんを治療する薬「キムリア」に5月、国内で最も高い3349万円の公的価格(薬価)が付きました。高額な薬価が物議を醸しています。
私たちが一番に優先したのは、治療への維持可能なアクセスを患者に提供することでした。そして今一番重要なこと、起こらなくてはいけないのが議論です。
――ノバルティスは5月に米国で脊髄性筋萎縮症向け遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」の承認も受け、こちらは薬価約2億3400万円で米国での過去最高額。日本でも昨年11月にこの薬の承認を申請しています。日本でゾルゲンスマにキムリア以上の薬価が付けば、さらに騒ぎになる。製薬メーカーとして議論する場に出て、高額薬剤と付き合っていく策を提案するときでは?
議論をしたい。ノバルティスも製薬業界も参加して、厚生労働省、医師、医療従事者、患者団体、政策立案者らステークホルダーみんなで討論するときです。