本庶祐・京都大学特別教授のノーベル賞受賞に日本中が沸く中、にわかに免疫療法が誉め称えられるという現象が起きている。無論、インチキな免疫療法もあるが、エビデンスに固執するがあまりに、免疫療法の持つ可能性を否定してきた日本の医療界は、大きな問題を抱えているのではないか。(ノンフィクションライター 窪田順生)

山中教授の受賞時にも
ノーベル賞詐欺が流行った

ノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑教授
エビデンスに乏しいから怪しい――免疫療法を一律すべて、ネガティブにしか捉えてこなかった日本の医療界は、患者の「治りたい」という気持ちに寄り添ってこなかった Photo:AFP/AFLO

「ノーベル賞詐欺」の毒牙にかかる人が現れてしまうのだろうか。

 本庶佑・京都大特別教授がノーベル医学生理学賞を受賞したことで、にかわに「免疫療法」に注目が集まっているが、それに乗じて「インチキ免疫療法詐欺」が増加すると一部医療関係者から警鐘が鳴らされているのだ。

 ご存じのように、ネット上には既に、怪しげな免疫療法をうたう自由診療のクリニックが溢れている。キノコを食べて免疫力アップ、水素水でがんが消えたなどなど、本庶氏が発見した免疫を抑制する効果をもつ分子・PD-1などと接点ゼロの「民間療法」だ。

 そんな怪しいクリニックが「ノーベル賞で世界も注目」「あの本庶佑氏も認めた」などとブームに便乗した虚偽広告を行い、がん治療に悩む方たちを餌食にするのではないかというのである。

 心配しすぎだと思うかもしれないが、実際には過去にも、ノーベル賞が詐欺の「ネタ」にされた例がいくつもある。

 たとえば2012年、山中伸弥氏が、iPS細胞の作成成功によって、ノーベル医学生理学賞を受賞した時も、新しく研究施設ができるので投資をしないかと持ちかける「iPS詐欺」が急増。国民生活センターには、2014年までに400件超えの被害が寄せられた。

 プロの詐欺師は、「日本人の新しもの好き」の心理を巧みに突いてくるのだ。

 今回の受賞でも、本庶氏の研究を活用したがん治療薬「オプジーボ」の製造・販売元である小野薬品工業の株に買いが殺到して、年初来高値を更新している。ここまで「引きのあるネタ」を利用しない手はないのだ。

 そういう意味では、一部医療関係者のご心配も当然で、警鐘を鳴らしていただくのもありがたい限りである。メディアも、本庶氏が熱心な阪神ファンだとか亭主関白だとかいう話で大騒ぎをするのではなく、今回のノーベル賞に関連する「免疫療法」は、保険適応される医療機関のみで受けるべきであり、怪しげな詐欺に引っかからないようにと呼びかけていただきたい。