浅野はFASTECHで台車の開発を担当。いかに車両を軽くして速度を上げるかに試行錯誤した。

 しかし、実際の営業車両となると、STAR21の後に導入されたE4系(愛称Max)、FASTECHの後に導入されたE5、E6系(列車名はやぶさ、はやて、やまびこなど)とも安全性や騒音、費用対効果などを勘案した結果、試験で出した最高速度で営業することはなかった。現行の東北新幹線の最高時速は320キロメートルである。

 15年に次世代新幹線開発リーダーに任命されると、「新幹線の価値を再定義すること」から始めた。速度至上主義でいいのか自問した。

 北海道新幹線が16年に新青森~新函館北斗で開業し、東北新幹線との直通運転を開始(北海道新幹線の車両はE5系を導入)した。最終目的は30年に予定する札幌延伸、全線開業だ。従来通り速度を追求し、最高時速を引き上げて時速360キロメートルで営業運転できれば、東京~札幌を4時間半で結べる。

 とはいえ東京~札幌の輸送シェアの大半は航空機で、たとえ新幹線が4時間半で結んだとしても、とてもかなわない。

 「新幹線に乗る利点は、誰にも邪魔されないまとまった時間があること。寝てもいいし仕事をしてもいい。おいしいものを食べたり、おしゃべりに興じたりしてもいい」と浅野は考えた。目的地まで時間がかかることを逆手に取って、多様化する客のニーズに応え、価値ある移動空間をつくることこそが航空機に対抗する利点になると狙いを定めた。

 そこからコンセプトづくりと、プロジェクトチームのメンバー集めにまい進する。設計、車両、サービス、試験などさまざまな分野でそれぞれ詳しい人物に声を掛けた。散り散りだったFASTECH時代のメンバーも呼び寄せた。

 議論を繰り返して最終的な営業車両のイメージを固めた。そこから逆算した開発要素と四つのテーマ「安全性・安定性」「快適性」「環境性能」「メンテナンス革新」を基に、専用の試験車両であるALFA-Xを造る決断を下した。