最大の難関は、社内でALFA-Xへの理解を得ることだった。10両編成で総工費約100億円。大きな投資判断を仰ぐことになる。通り一遍の高速化だけではない次世代コンセプトには、メンバーの熱い思いが詰まっている。「それを経営に代弁するのが自分の使命」(浅野)だった。

 反対意見も多数あった。例えば、ロングノーズにすると高速でトンネルに入ったときの圧力波により生じる騒音を緩和できるが、車両内の客席が減るため収益的にはデメリットだと指摘された。

 そこでALFA-Xの先頭車両は片方をロングノーズ型、もう片方をE5系に近い16メートル型にした。「両極端なものを試験することで、さまざまな可能性を探れる」と説き、第一関門となる走行試験へのゴーサインを取り付けた。

IoT、AI、AR駆使
未来型サービスの実験も

 走行試験は22年3月まで夜間、週2回ほど実施する。地震時に素早く止まるための「空力抵抗板ユニット」、着雪しにくい車体構造、上下制振装置など、技術の粋を集めた各機能を検証する第二関門の始まりだ。

 安全走行を検証した後は、サービス面での試験を予定する。利用ニーズによって内装をガラリと変えること、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、AR(風景にバーチャルな視覚情報を重ねること)も駆使し、情報提供を行うことなどを構想する。

 「東京から札幌に向かう家族に、途中駅から車椅子のおばあちゃんが合流すると、座席がバリアフリーの個室になる。あるいはビジネスマンが車内で会議できる空間があって、夕方になるとバーカウンターが登場したり。夢のストーリーを幾つも描いている」(浅野)

 これらの実現に向けて、将来の技術進展を予測しながら、外部連携も積極化して開発を進める。速度だけではない「世界一」の新幹線への夢は尽きない。(敬称略)

(ダイヤモンド編集部 柳澤里佳

【開発メモ】ALFA-X

 JR東日本による次世代新幹線開発の試験車両。2030年の北海道新幹線全線開業に向け、世界最高時速(営業運転時)360kmの実現を目指して東北新幹線の仙台~新青森間で走行試験を開始した。22mものロングノーズが最大の特徴。高速でトンネルに入ったときの圧力波により生じる騒音を緩和する機能を持つ。

ALFA-X
Photo by R.Y.