その器具はクジラの骨を柄にして先に編み針を付けたもの。小さくてもチクチクと痛そうで、読んでるだけであのあたりがキュッとなってしまう。そら、他人にはちょっとやってもらいにくいわ。しかし、それを自分で一日平均三回もしていたという。歯磨きじゃあるまいし、さすが普通の人ではない。しかし、いろんなことで活躍してたのに、ようそんな時間あったなぁ。

 18世紀の終わり、すでに結石を手術する方法もあったが、その当時のことだから命懸けである。それもインドでのことだ。結石の痛みのことも考え合わせると、理解できないわけではないが、やっぱり普通はやらんだろう。ちなみに、煙突掃除人に陰嚢癌が多発することを看破した名医中の名医、外科医パーシバル・ポットは、この話を聞いても信じなかったという。そらそやろ。

目次を眺めているだけで
そそられすぎ

 注意:気分が悪くなるかもしれないので、想像力豊かでセンシティブな人はここでレビューを読むのをやめたほうがいいかもしれません。

 目次を眺めているだけで、『胎児を吐き出した少年』、『頭に突き刺さったままのペン』、『チーズで釣ろう、サナダムシ』、『「蛇の糞」健康法』、『ぺっしゃんこになった水夫』、『ぶら下がる頭蓋骨、揺れる脳みそ』、『二股のペニス』、『胃でナメクジを飼う女の子』、『水陸両生幼児』、『キュウリの食べ過ぎが命取り』などなど、そそられすぎで、どうしても誰かに言いたくなってしまうような話ばかりだ。さて、あなたのお気に入りはどれだろう。

 たとえ論文になっているからといって、医学的に考えて、すべてが真実とはとても思えない。しかし、ええやないですか。患者さんを診察・治療して、心底驚きながら大まじめに論文を書いた昔のお医者さんたちに思いをはせると、なんだかとても愉快な気分になってきませんか?

(HONZ 仲野 徹)