スマイリーキクチスマイリーキクチさんの講演用の資料。メモは随時更新している(写真:オリイジン)

 子どもたちに、いま何より伝えたいのは、言葉が犯罪になる可能性があるということ。正義と暴力は紙一重ということをきちんと理解したうえでインターネットを使ってもらいたいということ、です。

 僕が受けた中傷は……例えば、「人間のカス 菊池」「菊池殺す」といった言葉をネットの掲示板などに何度も書きこまれたもので、書き込んだ本人にしてみたら、誰ひとりも悪口とは思わず、「悪を成敗している」気持ちなんですよ。

 現代人の多くはネット社会のルールを知らずに“インターネット”に接しています。車は、教習所に通って勉強し、試験に合格した人だけが路上で運転できるのに、ネットは、誰もがスマホを容易に手に入れて、その入り口に立てる。教育を受けていないから、当然、事故は起きますよね。だから、子どもたちには僕と同じ経験をしてもらいたくないし、何よりも加害者になってもらいたくないという思いで、僕の経験から得た「ネットにまつわる出来事」を伝えさせていただいています。

1000人のフォロワーより
本音で話せる3人が大切

 講演終了後にはアンケートを書いてもらいますが、そこには「自分(がスマイリーさんの立場)だったら死んでいた」とか、「こんな経験をしているのにどうして(スマイリーさんは)生きられるんだ?」といった感想があります。だけど、いままで、僕は死のうなんて一度も思わなかったんですよね。僕は毎日「生きる」ことしか考えてないのに、中傷を受けたことで、どうしてみんなは「死」に結びつけるんだろう?って……逆にそれが不思議でしかたなかった。だって、僕は何も悪いことをしていないし、ましてや、「死ね」という言葉に従うなんて、僕の中にはまったくない思考でした。

 僕はネットがない時代を長く生きてきたので、困った時はひとりで抱え込まず、誰かに相談するようにしています。ネットはモラルとツールがあって初めて有効活用できるのに、人を追い詰めることに使ってしまうなんて、そんな悲しいことはありませんよね。昔だったら、好きな女の子の自宅に電話をかけて、親御さんが出た時はこんな言葉を使おうとシミュレーションし、そこで目上の人に対する礼儀や言葉遣いを学びました。買い物に行けば、商店街の人たちと会話をしながらコミュニケーションを覚えました。ところが、現代人は近くのコンビニですべての用を済ませたり、極端なことを言えば、誰とも一日中接することなく終わる人もいます。一方で、SNSのフォロワー数をやたらに気にしたり……フォロワーが1000人いるより、本音で話せる人が3人いれば人生どうにかなるというのが僕の持論。