ANAHDはその成長を取り込もうと、17年に304億円を投じて子会社化した。日本航空(JAL)が破綻のみそぎを終えればLCCを立ち上げると読み、バニラに早急にてこ入れし、かつ中距離線で先行したい思惑があった。

 「もうからないことが大嫌い」と公言する井上は、バニラの救済合併や中距離線進出に興味を示さなかった。それでもピーチが最終的にバニラを受け入れたのは、押し寄せる“黒船”に対抗するには規模を拡大し人員体制を強化する必要があること、首都圏マーケットを取り込まなければ成長に限界が来ることを自覚していたからだ。

 LCC市場は国内線、国際線共に関西より首都圏の方が成長余地は大きい。首都圏空港は20年に発着枠を拡大し、成田のLCCターミナルは利用客を倍増させる計画を打ち出している。バニラと一緒になれば、西と東に拠点を構え、豊富な人材も武器に、国内外に路線を拡大する戦略を描ける。

 利用客の反応を見ると、リピーターほど統合に対し不安の色が濃い(下図参照)。とりわけピーチは、数十回、数百回の搭乗歴を持つファンを獲得してきたことが強み。客室乗務員が関西弁で「ホンマ、おおきに」と出迎えるなど、癖の強さでも支持を集めてきた。統合後、首都圏の客が嫌がりそうな個性を消していくのではないかとピーチファンは懸念する。

 「とがってきたピーチが万人受けを狙う必要はない。むしろ、まだ足りないのがコアなファンづくり」と井上は言う。ピーチ利用客の5割は20~30代。常道なら、ファミリーやアクティブシニアなどへパイを広げるべきところ。新生ピーチのマーケティングはなかなかにかじ取りが難しい。