スマイリーキクチスマイリーキクチさんの講演用の資料。メモは随時更新している(写真:オリイジン)

 でも、警察の方が見回りに来るような生活をしなければならないことを知らずに文句を言ってくる人たちに対して、僕は理解してもらおうとは思いません。真実を訴えても分かってもらえないので、何を書かれようともスルーする気持ちが重要だと思うようになりました。中傷がいちばんひどかった頃に比べたら、最近はスマホの普及でさらに人権侵害などが増えています。「僕の事件が警鐘を鳴らすかな?」と期待しましたが、ネット(SNS)の利用者が増えれば増えるほどトラブルも増えていく。

 そんな世の中に悲しさを覚え、経験者として何かしなきゃいけない、団体を作って地域にしっかりと根づこう、トラブルが起きた時に真っ先に火消しに入れる人が地域にひとりいれば、被害者を救えるし、加害者も減らせる―と思い、いま、僕は“人集め”をしている最中です。

 誹謗中傷は特殊な例と思われがちですが、今日もどこかで交通事故が起き、被害者と加害者が生まれているように、SNSをやっていれば被害に遭うかもしれないし、逆に、加害者になる可能性だってある。そんな危機感を持つだけでもひとつの対処法になるはずです。自分の情報をネット上に出すことは加害者にもなる可能性もあるという危機感を持って、ネットの世界と向き合ってほしいですね。

感情は吐き出すだけでなく、
時に押し殺すことも必要

 それから、朝の電車でよく感じるのですが、車内の殺伐とした空気、怖くないですか?

 僕が高校生の頃はちょうどバブルの全盛期で、景気がいいから、誰もが笑顔で、実に幸せそうな表情をしていました。それが、現代はみんながスマホに夢中で、足が不自由な人や松葉杖の人が近くにいてもほとんど気づかない。スマホを見ている人は目線が常に下だから、顔はたるんじゃっているし、黒いマスクなんてしていたら余計に肌に悪い。「あなた、いまこんな表情をしていますよ」と、写真で教えてあげたいくらい(笑)。

 そこで、僕は毎朝、「今日一日、笑顔じゃ誰にも負けない」という思いで家を出るようにしました。そうすると、しかめっ面をしている人がやたら目につくんです。「誰がいちばんしかめっ面をしているか、そのチャンピオンを決めよう!」とひそかに楽しんでいます(笑)。