先行き不安が
ウォン安につながっている
4月下旬以降、韓国の通貨“ウォン”が米ドルや円に対して下落している。アジア通貨の中でも人民元と並んでウォンの下落が目立つ。市場参加者の中には、「政治、経済および地政学リスクを反映してウォンが売られやすい状況になっている」と指摘する声が多い。
これまで韓国では、政府の後押しもあり財閥企業が巨額の設備投資を行い、海外から資材を仕入れて自動車や半導体などを生産・輸出して経済成長を遂げてきた。ウォン安は財閥企業の収益を“かさ上げ”し、韓国のGDP成長率を押し上げた。
しかし、現在ではウォン安にもかかわらず輸出にブレーキがかかっている。韓国最大の輸出先である中国経済は投資に依存した成長の限界を迎えた。さらに、韓国経済を実質的に支配してきた財閥企業の経営内容も悪化している。韓国の経済運営はかなり厳しい状況を迎えているようだ。そうした不安がウォン安につながっている。今後はウォン安が経済にマイナスに働く部分が増える恐れもある。
文在寅大統領は支持率維持のため財政出動を重視している。経済の長期停滞リスクが高まる中で財政が悪化すれば、韓国の政治と経済は一段と厳しい状況に直面するだろう。それは、朝鮮半島情勢の不安定化など極東情勢に無視できない影響を与える。
厳しい状況に
追い込まれる韓国経済
韓国経済は、想定されてきた以上に厳しい状況に直面している。経済環境の悪化は、政治の停滞懸念をも高めている。それがウォン独歩安につながっている。
1~3月期、韓国の実質GDP成長率はマイナス0.4%だった。当初、経済の専門家らは、韓国経済はプラス成長を維持すると予想していた。それだけに、マイナス成長突入のマグニチュードは大きい。