好きなアーティストの曲を録音し、「ウォークマン」で繰り返し聞いた…そんな青春時代を過ごした中高年は多いはず。デジタル音源が流通する現代ではあるが、今あえて当時のカセットテープを楽しむスタイルに注目が集まっているという。(清談社 真島加代)
中目黒の住宅街に突如現れた
カセットテープ専門店
駅前の喧騒を離れ、中目黒の静かな住宅街を進んだ先にあるのが、カセットテープ・アナログレコード専門店「waltz」(東京・中目黒)。日本で唯一のカセットテープ専門店である。店内には色とりどりのカセットテープやアナログレコード、古本が並び、友人の家に来たようなワクワクを感じさせる。
「中央のテーブルに平積みになっているのは、新譜やおすすめのカセットテープです。今、あえてカセットで作品を発表したいというアーティストが世界的にとても多いんです。中には、カセットでしか聞けない音源もたくさんありますよ」
そう話すのは店主の角田太郎氏。レトロな音楽メディアというイメージが強いカセットテープが注目されるようになったのは、2010年代前半に始まったアメリカ西海岸でのムーブメントだったという。
「始まりはアメリカのインディーズレーベルのアーティストたちがカセットで作品を発表するようになったこと。インディーズからメジャーに飛び火して、世界中に伝播していったのが現在のカセットカルチャーの特徴です。デジタル音源が普及してから『アルバムを曲順通りに聴いてもらえなくなった』と嘆いているアーティストにとって、曲をスキップせずに聞いてもらえるカセットは魅力的なメディアなんです」
また、近年同じアナログメディアとして人気が再燃しているアナログレコードに比べ、カセットテープはその6分の1ほどのコストで制作できる点も、新譜のリリースが増えている理由だという。
「カセットはアルバムの世界観を崩さず、コスト面でもメリットが多いのでアーティストにとって理にかなったメディアでもあります。カセットのリリースが増えたことで、音楽を聴く側のニーズも高まっていったようです」