2018年に露呈した
安全性の欠如

 2018年8月31日、央視網(中国中央電視台のインターネットテレビ局)は、「滴滴の安全性について、民衆は非常に関心を高めている」と報じた。運転手と乗客の事件として、「4年で少なくとも50件のセクハラや強姦があった」というのだ。実際、同年5月と8月に、運転手による乗客殺人事件があった。事件は相乗りの「順風車」で起きた。

 4ヵ月間に2件の殺人事件である。滴滴の程維董事長、柳青総裁が謝罪会見を行ったのは8月28日のことだった。国民は滴滴の対応の悪さや誠意のなさを非難した。

 ちなみに、柳青総裁は7月に来日している。ソフトバンクと設立した合弁会社、「DiDiモビリティジャパン」の記者会見に臨むためだ。日本経済新聞の取材には、海外の現地パートナーと提携し、ライドシェアを普及させる考えがあることを示していた。

 同年末、滴滴が開いた全社総会は寒々しいものとなった。従業員のボーナスは半分に減らされ、幹部はゼロ。業績が予想を下回ったためだといわれているが、泣きっ面に蜂とはこのことか、交通運輸部(日本の国土交通省に相当)は「12月31日までに条件を満たさないネット予約車の車両を市場から引き揚げよ」と通達した。

 年明け、滴滴の株価は40%下落し、1月末、中国で「滴滴は新サービスの開発部門やライドシェア(相乗り)の管理部門を中心にリストラを行う」というニュースが拡散した。

『シェアリングエコノミー発展報告2019』は、2018年の動向を「問題が集中して爆発した、重大な悪性事件が出現した1年だった」と総括し、次のように報告した。

「人の生命や財産に及ぶ安全をおびやかす悪質な事件は、民衆と世論の、シェアリングエコノミーに対する規制発展への要求をさらに強烈なものにした。管理監督は最重要課題となった」

 上述したように、滴滴に見るシェアリングエコノミーは今や、条件に合わない運転手や車両が退場を余儀なくされている。ネット予約車が合法的に走るには、プラットフォーマーは経営許可証を取得し、車両は運輸証がなければならない上、運転手はネット予約車従業資格証を取得しなければならない。

 しかも、車両は営業用車両であることに加え、8年経てば廃車処分を求められるという厳しい条件が課されるようになった。中国の電子メディアによれば、「従わない場合は、ブラックリストに入れられ、2万元の罰金が課され、車両を30日間押収される」こともあるという。