話題になった分「所期の効果」は出ている!

 さて、前回述べたように、政治の場でのこの問題の取り上げられ方には正直なところ「うんざりしている」と言わざるを得ないのだが、これだけ大きな話題になると、金融ビジネスの現場に影響が現れている。

 個別の会社名は挙げないが、筆者の知り合いのある金融マンは、「正直なところ、例の『2000万円』が話題になってから、当社のiDeCoへの申し込みが急増しています」と言う。世間の「老後に備える資産形成」に対する関心が大いに高まっているようなのだ。

 もともと、くだんの報告書には老後に向けた資産形成の必要性を訴え、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」といった制度の普及を促すことが中心的な意図としてあったと思われるのだが、別のかたちで問題が大きくなったことで注目度が一気に高まったのだ。

 それはそうだろう。この問題のメディアでの取り上げられ方は異様なまでだったし、この露出具合を広告費に換算すると莫大なものになるだろう。

 ある意味では「炎上商法」的な効果の出方なので、素直に評価はできないのだが、現時点で金融・運用業界の側では「結果的な効果」が大きく出ているようなのだ。

 ただし、この問題が悪いかたちで注目されたことで、金融庁や厚生労働省といった関連官庁が萎縮してしまう心配は残っている。局長が謝罪に追い込まれた金融庁では個々の役人がこの問題に関わることに個人としての「リスク」を感じる可能性がありそうだし、報道によると厚労省筋では「自助」という言葉を慎重に避ける動きがあるという。

 制度としてのiDeCo(厚労省管轄)も一般NISA・つみたてNISA(金融庁管轄)もまだまだこれから周知と普及が必要な段階だし、公的年金については今年が5年に一度の財政検証と「基本ポートフォリオ」その他の運用方針の見直しの時期に当たっている。