メッセージの順序も、よく考えられている。

 2016年8月の1回目のメールでは、まず自分がシャープを「独立した会社」として再建するためにやって来たことを明確に伝える。そしてその上で、業務の見直し、コスト意識向上、信賞必罰人事の導入など、まずは「早期黒字化に向けた意識改革」を促す。

 翌月の第2回では、結束力を高め、有言実行で全体最適を追求する“One SHARP”の意識を持てと説く。

 そして、そうしたビジョンが浸透し始めた11月のメールでは、“Be Original”という新たなコーポレート宣言をグローバルに打ち出す。創業の精神に立ち返り、再び成長していこうという呼びかけだ。

 もちろん、メールでビジョンを語るだけではない。さまざまな形で社員とのコミュニケーションを密にする工夫をしている。

 例えば戴社長は、社長室を「大部屋」とした。他の社員から孤立した専用の執務室ではなく、大勢の人間が出入りでき、いつでもコミュニケーションを取れるようにしたのだ。

 そのため、戦略会議なども、必要な時に社長室に幹部を集めて臨機応変に開ける。テレビ会議なども使いながら、多様な意見をすり合わせ、迅速な意思決定が可能だ。

 また、現場を重視し、納入業者との価格交渉などにも同行。自ら厳しく値切ったりもする。

 さらに戴社長は、シャープの社員寮で生活し、2017年度までは無給、つまり役員報酬ゼロで働いている。

 こうした社員と一心同体で常に意見をすり合わせながら、率先垂範の姿勢で組織を引っ張る行動姿勢は、まさしく「日本型リーダーシップ」というにふさわしい。

 それに加えて戴社長の経営スタイルを特徴づけるのは、その驚異の「スピード」だ。先に触れたように、その意思決定はきわめて迅速であり、就任した年のうちに黒字化を達成できたのも、そのスピード感があっての偉業だ。

 このスピード経営の源が、“鴻海流”であるのは間違いない。鴻海の郭台銘(かく・たいめい)創業者兼CEOは「スピードのある者が遅い者を打ち負かす」と発言している。

「日本型」の、意見のすり合わせによる「共創」を行いながら、「鴻海流」のコスト意識とスピード感で「有言実行」をする。

 これこそが、中田氏が指摘する戴社長の鴻海流「日本型リーダーシップ」に他ならない。