2社の強みを「すり合わせ」、
新しい価値を「共創」する

 ところで、国際的な資本提携では「主従」の発想になりがちだ。

 外資の傘下に入った会社は「主」である親会社の「従」となり、その色に染められる。そのために元来持っていた独創性が失われる、といった感覚を、我々はどうしても持ってしまう。

 では、シャープの独創性も、鴻海傘下となることで失われてしまったのだろうか。

 実際、日本の電機メーカーの中でも、シャープの独創性は際立っていた。

 冒頭で触れたシャープペンシルは言うまでもなく、鉛筆しかなかった時代には、常識破りの画期的な製品だった。また、国産のラジオ受信機や電卓の第1号機はシャープ製である。

 さらに1993年に初号機が発売された「ザウルス」は、現在のスマホにもつながる個人情報端末(PDA)の先駆けだった。2000年にJ-PHONE(現ソフトバンク)が発売したシャープ製の携帯電話J-SH04は、初の「写メール」が使えるカメラ付き携帯電話だった。

 鴻海の買収で、こうしたシャープの独創性が弱まってしまったとしたら、もったいない限りである。しかし、本書によると、弱まるどころか、むしろ強化されているようなのだ。

 中田氏は、水なし自動調理鍋「ヘルシオホットクック」を例に挙げている。材料を入れてメニューを選ぶだけで、最適な火加減に調整し、勝手に調理してくれるという優れものだ。

 この製品は、当初シャープが単独で開発を進めていた。しかし、新機能の鍵となる「かき混ぜ回転ユニット」の開発が停滞。その時点で、鴻海がユニットの設計についてアドバイスを行うことで停滞を脱し、商品化にこぎ着けたという経緯がある。鴻海の得意領域である、精密機械製造のノウハウが生かされたというわけだ。