今後のイノベーションでは
グローバルとローカルのバランスが大事

 中国の検索サービス「百度(バイドゥ)」やマイクロブログ「微博(ウェイボー)」といったサービスは、グーグルやツイッターなど米国のサービスをまねて立ち上げられたものです。

 中国市場では外資企業の活動が制限されており、海外から進出する企業にとってアンフェアな条件は確かにあります。しかし、中国で大きく成長したIT企業は米国から学んだものを独自に進化させた後、今や他国へ輸出するまでに発展させています。

 中国は今、悔しいけれど日本より進んでいる分野が増えています。課題はありつつもテクノロジーを使いこなせているということは、世界最先端のAI国家になることが予測できるということ。日本人はそれを嘲笑している場合ではありません。

 中国は広く、貧しい地域もいまだにたくさんあり、マナーがなっていない人もまだまだ多いのは確かです。一方で知性に秀で、グローバルでも引けを取らない富を持つ人もたくさんいます。日本人の、特に上の世代の人の中には中国を小ばかにしたり、下に見たりしている人もいますが、今や大国として米国も抜きそうな勢いです。

 そのほか、個人情報に対する考え方が緩く、著作権の扱いや模倣ブランドといった評価できない部分も中国にはありますが、ダメなところだけを見てバカにし、「安かろう悪かろう」などと言っている場合ではありません。良い商品やサービスもたくさん出てきており、むしろ日本がまねすべきところが多くなっています。

 ITの世界では一時期、グローバル展開によりビジネスを大きくすることが流行していましたが、今ではグローバルとローカルのバランスが大事になってきています。特に米国でトランプ政権が発足してからは、米国も含めた全世界でのビジネス展開が難しくなったこともあって、よりローカルが見直されています。そうした環境の下、日本でももっと日本に特化したサービスを展開してもよいのかもしれません。

 日本は極端から極端に行きがち。「日本に特化したサービスを」となると、昔、台頭したガラケー(フィーチャーフォン)に象徴されるような、日本だけでしか通用しないイノベーションへ走りがちです。これからは、日本に特化した高機能・高性能なサービスや製品を開発した上で、それをそのまま他国へ展開するのではなく、他国で求められるスペックに落とし込んで、グローバルに輸出するビジネスモデルを模索してもよいのではないでしょうか。