もっとも簡単に予想されるのは、スマートフォンを使って街角で見知らぬ人の写真を撮れば、またたく間にその人物の名前や素性、友達が明らかになってしまうというものだ。しかも、撮られている本人は、そんなことをまったく知らないままに、である。

 何とも恐ろしいことではないだろうか。折しも、フェイスブックは今、ユーザーに実名を使用するように強く働きかけている。そうすると、写真だけで実名もフェイスブックのページも呼び出されてしまう。公衆ではアノニマス(匿名)の存在でいられると思っていたのに、そんな権利もなくなってしまうということだ。

 現在のところ、フェイスのアプリは自分や友達の写真に使えるだけで、知らない人の写真には使えないとしている。だが、この場合の「使える」と「使えない」の間は紙一重でしかない。電車の中で、レストランの中で、誰かがこっそりとあなたのことを知り始めているかもしれないのだ。

 もちろん、これにはプライバシー擁護派からの大きな反対が出るだろう。しかし、なし崩し的にこうした使い方がされる可能性は、残念ながら小さくない。

 もうひとつ、フェイスブックにとっての顔面認識技術の利点は、顔面に限らず他のいろいろなものを認識できることである。ブランドのバッグ、大手飲料メーカーのドリンク、あるいは街の中の建物など、今後こうした画像認識技術がマスターしていく対象は無限にある。フェイスブックのユーザーがアップロードした写真に、そうしたモノや建物が写っていたら? いわずもがな、フェイスブックはそれをネタにしてさらなる収入を稼ぐということである。

 フェイスの買収は、これまでインターネットのサイト内にだけ留まっていたフェイスブックの手が、現実の世界にまで伸びてきたという感を起こさせる。興味深いビジネスの展開であると同時に、ひどく気味の悪い動きでもあるのだ。