日本企業が
中国の介護でダメな理由

 日本企業が中国の介護ビジネスで失敗する理由は何か――。

 現地で「日本企業が中国の介護でダメな理由」を聞いてみると、いくつか共通した回答が得られた。それは以下の3点に集約される。

(1)明らかな調査不足(立地条件の失敗など初歩的なミスが目立つ)
(2)中国人の習慣や文化、嗜好(しこう)を十分に考慮していない(しかも、それは地域ごとに異なる)
(3)コスト意識やビジネス感覚に乏しい(中国の事情に合っていない)

 以下、関係者のコメントを紹介しながら、具体的に説明しよう。

◎明らかな調査不足

 これについては、中国と日本の介護事業に詳しい日中福祉プランニング代表の王青氏は「当初、中国に進出した日本企業は、立地条件が極めて悪い場所に老人ホームを開設したり、介護ビジネスの経験がない不動産会社やIT系企業をパートナーに選ぶなど、明らかに情報収集不足と思われる失敗が多かった」と指摘する。

 特に介護施設では、立地は重要である。

上海紅日養老グループ董事長の陳琦氏
上海紅日養老グループ董事長の陳琦氏。自社の介護施設の改善プランについて熱く語っていた Photo by T.Y.

 上海紅日養老グループ董事長の陳琦氏は「介護施設の運営で重要なのは、何よりも立地、そして介護スタッフの確保です。中国の介護事業者もこの2つで苦労している。外国企業なら、そのハードルはますます高くなる。よほどいい現地のパートナーと組まなければ、成功は難しいでしょう」と説明する。

 この紅日グループは、上海を中心に13もの老人ホームを運営する民間企業。これら施設は開業後半年で100%の入居率を誇り、中国でも人の出入りが激しい介護スタッフの離職率がわずか1%と「中国で最も成功している介護事業者」として知られる。

介護施設の1室には紅日グループの歴史が展示されていた
介護施設の1室には紅日グループの歴史が展示されていた Photo by T.Y.

 その成功要因は、まず、利便性が高い都市部という立地での開設。それから何よりも、農村部から出稼ぎで来た介護スタッフに対する「家族同様」の面倒見の良さと人材教育で介護スタッフのモチベーションを高め、介護サービスの質も向上させていることだ。結果的に、離職率も低くなり、利用者や介護スタッフも集まりやすいという好循環を生んでいる。

調理場の様子を入居者や入居者の家族が見られるようにモニターで映し出している(紅日グループの施設)
調理場の様子を入居者や入居者の家族が見られるようにモニターで映し出している(紅日グループの施設) Photo by T.Y.

 日本では、大型の高級老人ホームや利用料金が安価な特別養護老人ホームなどは広大な敷地が確保でき、土地代の安い郊外に開設されることが多い。このため立地について、あまり深く考えない日本の介護事業者が多かったのだろう。

 しかし、中国では立地条件は、日本以上に利用者や介護スタッフの確保に大きく影響してしまう。ここで失敗すると、致命的となる。