既成概念にとらわれず職場や仕事を見直す

“日持ち商品”開発でエネルギーコスト削減<br />ロス率ゼロで利益を最大化する方法とは!?村 井哲之(むらい・てつゆき)/環境プランナー 環境経営戦略総研 代表取締役社長。1957年、山口県生まれ。広島大学卒業後、リクルートなどを経て現 職。環境経営の専門知識を生かし、多くの団体や企業での講演、テレビ・新聞・雑誌でエネルギーコスト対策や節電アドバイスなどを行う。主な著書に『コピー 用紙の裏は使うな!』『節電の達人』など。

 事務所や事業所など、作業する場所に必要な明るさは、労働安全衛生法をはじめとした法令で定められている(ガイドライン)。例えばJIS規格では、事務スペースで750ルクス以上の照度が必要と定めている。オフィスビルなどではこうした規格に対応するため、1000ルクス以上の照度を確保できる照明設備を整備しているケースが多い。ところが、海外ではこの規制値がまったく異なっている。米国では200~500ルクス、ドイツでは500ルクス、オーストラリアに至っては160ルクスが、最低照度だ。これらに対して、1000ルクス以上というのは、いかにも過剰である。日本のすべての事業所が500ルクスにすれば、全国で150万キロワットのピーク時電力消費量を抑えられる。実に原子力発電所1基分程度の出力に相当する。

 同様に、空気の清浄度を確保するため、二酸化炭素濃度は1000ppm以下と法令で定められている。室内の換気はこの基準に合致するように行われるのだが、実際に事業所やオフィスの二酸化炭素濃度を測定してみると、750ppm程度を維持しているケースが多い。全国の企業等でこれを基準通りの1000ppmとすると、実に210万~310万キロワット、原子力発電所2~3基分のピーク時電力消費量を削減できる。

 快適な労働環境を守るために設定された法令上の基準は、日本の場合、相当にハイレベルと考えてよい。その基準を上回る環境をつくり出すための電気の使用は、無駄であるとも考えられる。基準は目安であり、その職場に必要なレベルの快適性は別に設定しても構わないはずだ。基準が規制を伴うなら、下限をクリアすればよい。

 照度や換気の他にも、従来通りが最良との既成概念ができてしまっているケースは少なくないだろう。そうした既成概念にとらわれることなく、あらためて職場環境や仕事の進め方を見直していただきたい。