さらには、画像認識のシステムをつくるにあたり、男女の視点の運び方の違いにも気づいた。男性は遠くと近くを交互に見て、ものの輪郭と距離感をつかむ。これに対し、女性は、比較的近くにあるものの表面をなめるように見て、微細な変化も見逃さない。このため、デートをする際、女性は男性が注意力散漫に見えてしまう。自分に集中してくれておらず、愛が足りないと勘違いしてしまうのだ。これが人工知能の研究室で著者が知った、悲しい男女のミゾであった。

◇男と女の対話は、どうしたってすれ違う

 では、先述したように、女性脳がプロセスを語ることを重視するのはなぜなのか。じつは女性は、ことの経緯を語るうちに、そこに潜む真実を探っている。そして、人間関係のひずみや自分の失言などに気づいていく。女性の対話は「プロセス指向共感型」なのだ。

 重要なのは「思う存分経緯を思い出すこと」である。五感をフル回転して認識した状況をリアルに再体験し、経緯をこと細かに話すなかで、答えが見えてくるのだ。そのため、話の腰を折られると、真実を探る演算が中断されてしまう。逆に共感によって上手に話を聞いてもらうと、演算の質が上がる。これが女性脳には共感が必要といわれる所以だ。

 これに対し、男性の対話は「ゴール指向問題解決型」である。男性は、全体の主幹をシンプルにとらえようとする。長らく狩りを担ってきた性であるためだ。全体を俯瞰して、ものの位置関係と距離感を正確に把握しようとし、公平性を重視する。

 よって、女性の、着地点のわからない話に寄り添うことは、男性にはかなり難しい。つい、「何がいいたいんだ?」「結論は?」と話を遮ってしまう。

 たとえば、妻が「なんだか、腰が痛くて」といったとしよう。男性がいきなり「医者に行ったのか」と返したら、対話は破綻する。正解は、相手の言葉を反復して共感で返すことだ。「腰が痛いのか。それはつらいね」。これだけで女性の脳のストレス信号が減少し、不調が軽減することもある。

 このように、対話には、女性が好むプロセス指向共感型と、男性が好むゴール指向問題解決型の2種類があることに留意したい。