これまで50の新規事業(企業内起業17回、独立起業19回、週末起業14回)に携わってきた守屋実さんの初の著書『新しい一歩を踏み出そう!』が5月15日にダイヤモンド社から発刊されました。守屋さんは、大学在学中から現在に至るまで、一貫して新しい事業だけをやり続けてきたという稀有なキャリアの持ち主。守屋さんの実績を表す一端といえるのが、創業に参画した2社が昨年上場したこと。2018年4月に介護業界に特化したマッチングプラットホームのブティックスを、5月に印刷・物流・広告のシェアリングプラットホームのラクスルを2社連続で上場に導く。本連載は、守屋さんのこれまでの様々な経験を踏まえ、主に若手ビジネスパーソンに向けて「仕事のプロ」になるための具体的な方法を伝授していきます。

30年、続けられますか?「仕事のプロ」は、量稽古して勘所を掴む

私の新規事業人生は、この一言で始まった

 私が「仕事のプロ」であり、より具体的には、「新規事業のプロ」であるとしたら、その一番のウリどころ、他の新規事業のプロとの差別化のポイントは、

 「30年続けてきたという量稽古」の部分です。

 私は、今でこそ、いくつかの会社の代表をやっていますが、これまでの経験の多くは一人の従業員としての立場でした。

 また、「仕事のプロ」としてのセンスが光るというよりは、呑み込みが悪く器用でもないので、どれか一つをアピールするとしたら、やはり、「一貫して頑張ってきた」が正直なところなのです。

 しかも、じつはこの一貫性、当初は、自らの意志ではなく「上から与えられたもの」でした。

 私は、ミスミに入社したとき、田口弘さんに、こう言われたのです。

 「我が国には、経理のプロや法務のプロはいる。弁護士が弁護がうまいのは弁護ばっかりやっているからだ。しかしながら、翻って我が国の新規事業を見ると、その事業がうまくいったら、事業責任者としてその事業とともに出て行ってしまい、2回ぐらい失敗したら二度とアサインされなくなってしまう。だから、常に新規事業の素人が新規事業を担っており、あらゆる企業で、おびただしい非効率がそこかしこに散在している。これではダメだ。だから、あんたはずっと新規事業だけをやるんだ」

 私の新規事業人生が、始まった瞬間でした。

 以降、田口さんのもとで2社、20年間、何かしらの新規事業にアサイン(任命)され続けました。溜めた知見のほとんどは失敗の知見なのですが、その意味するところは、「それだけの失敗を20年間も許されてきた」ということです。

 本当に稀な話であり、ある意味、追随不可能な偉業なのではないかと思います。私の偉業なのではなくて、田口さんの偉業というのが、正しい表現だとは思いますが。