量稽古を避けるな、ぶつかれ

 仕事もそうで、はじめは周囲や先輩に仕事のやり方を教えてもらい、必要な知識を学び、いざ始めたところで教わった通りにすんなりうまくいくはずはなく、失敗や反省を繰り返しながら、少しずつ身になっていきます。

 その積み重ねの中で、商売のコツを学び、「あの球を投げれば興味を持ってくれるかもしれない」「前回はうまくいかなかったけど、この変化球ならどうかな?」などの「勘所」が掴めてくるのです。

 あるいは、先輩の背中を見て「こんなふうに仕事を進めるとより効率がいいのか」「こういう対応は見習いたいな」と、仕事の技術や姿勢を吸収するなどして、いつしかそれが自らの仕事にもいい形で反映されてくるのだと思います。

 それらは、量稽古があるからこその話であり、そして行きつく先は、

 ある一定の閾値を超えた量稽古をこなすと、初めての新たな仕事にも既視感が生まれ、散漫に散らかった現象の山の中に本質を見出し、まだ見えていないことが多い段階でも決断をすることができるようなる

 のです。

 「仕事のプロ」になりたいという人には、これらの過程は付き物であり、量稽古は避けて通るよりむしろ、早く体当たりした方が、トータル、最終的に、ショートカットになるのだと思います。

 【15歩目】閾値を超えて仕事を重ねると、やがて、「仕事のプロ」の景色が見えるようになる。

守屋 実(もりや・みのる)
1969年生まれ。明治学院大学卒。1992年にミスミ(現ミスミグループ本社)に入社後、新市場開発室で新規事業の開発に従事。メディカル、フード、オフィスの3分野への参入を提案後、自らは、メディカル事業の立上げに従事。2002年に新規事業の専門会社、エムアウトをミスミ創業オーナーの田口弘氏とともに創業、複数の事業の立上げおよび売却を実施。2010年に守屋実事務所を設立。設立前および設立間もないベンチャーを主な対象に、新規事業創出の専門家として活動。自ら投資を実行、役員に就任、事業責任を負うスタイルを基本とする。2018年4月に介護業界に特化したマッチングプラットホームのブティックスを、5月に印刷・物流・広告のシェアリングプラットホームのラクスルを2社連続で上場に導く。