ダーウィンはノートを何度も見返して逡巡したが、結果として敬虔なキリスト教徒の女性と結婚し、子どもにも恵まれた。そして、この結婚が進化論を世に公表するかどうかの決断に、大きな影響を与えたことは、このノートを記したときのダーウィンは知らない。

 ダーウィンの決断エピソード以外にも、国際テロ組織のアルカイダの最高指導者ウサーマ・ビン・ラディン捕獲作戦での決断から身近な天気予報の予測手法の進化まで、決断のおもしろく深い物語がキュレーションされている。

私たちの子孫の繁栄に重大な影響を与える
新たな種類の決断が登場

 そして、昨今の環境問題やテクノロジーの進化により、新たな種類の決断が登場している。過去に経験したことがあり、何を心配しなければいけないかわかっている種類の決断(たとえば、洪水や津波)ではなく、三世代後に噴出するかもしれない脅威から身を守るために、どんな先手を取るかの決断である。

 気候変動やAIなどのスーパーインテリジェンスの発展について、50年から100年後にどうなるかの予測はあるが、実際に人類が直面した経験がない。しかしよりよい結果を実現するためには今、決断を下し、それを行動に移すことが求められている。今の選択が私たちの子孫の繁栄に重大な影響を与える。私たちの世代はどのように取り組もうとしているのか、そして賢明な選択はできるのだろうか。

 しかし、不確実な未来についての意思決定はあらゆる有識者がこれまでに議論し、手垢がついて、自分の頭で考えるよりも、往々にして誰かの意見に流されてしまう。そこで、異質で手垢の比較的ついていない決断の問いを最後に紹介したい。

「私たちはほかの惑星に住む知的生命体と話すべきなのか」である。イーロン・マスクを初めとする科学とテクノロジーの先覚者たちは「ノー」と答える声明に署名した。あなたなら、どうするか、そしてどんなメッセージを送る決断をするだろうか。

ダーウィンも結婚に悩んだ?「先人の物語」を通して身に着く決断力

(HONZ 山本尚毅)