むろん、厚労省も対策の必要性は認識してきた。そして、多様な支援を必要とする住宅弱者と生活保護に関する検討会を、2018年11月から実施している。検討会の「目玉」の1つは、貧困ビジネス対策だ。

 そして2019年6月、政策を規制として具体化する省令案が公開された。私の周辺には、省令案の公開と同時に、怒りや悲しみや失望の声が溢れた。特に大きな落胆と失望を示したのは、「貧」と「困」を背負わされて人生を送ってきた人々のニーズに寄り添い、「仮の行き場」の暮らしを長期化させず、「その人」が幸せに地域で暮らしていくためのサポートを、長年続けてきた人々だった。「貧困ビジネス対策」は一応行われる方向だが、現在の「貧困ビジネス」事業者は、おそらく全く排除されないだろう。

 今回の厚労省の省令案は、あくまでも「無料低額宿泊所」を運営する「無料低額宿泊事業」に関するものだ。問題は、その「無料低額宿泊事業」の概念が、とめどなく拡大されそうなことにある。厚労省の検討会では、2018年12月に開催された第2回で、この検討が行われた。

厚労省の資料に見る
「無料低額宿泊所」の範囲は?

 さて、問題の「無料低額宿泊所」の範囲は、厚労省の2018年12月の資料では、下の表の通りだ。今回の省令案も、同様となっている。

 上下方向、「列」に注目して見てみると、まず「住居貸付」(賃貸借契約)で、入居対象が生計困難者となっている場合、または意図的に生計困難者を集めている場合には、「無料低額宿泊事業」となる。「福祉の方歓迎」という看板を掲げている低廉な賃貸アパートも、解釈と運用次第ではここに含まれる可能性は皆無ではない。

 言い換えれば、通常の賃貸アパートであり、家賃と共益費しか徴収しておらず、若干の生活支援や見守りなどの「その他のサービス」を提供しているわけではないとしても、入居者が低所得層である場合には「無料低額宿泊事業」とされかねないのだ。