貧困ビジネス規制の名のもとで進む、ほぼ一億総「住宅弱者化」
厚労省で議論されてきた「無料低額宿泊所」の範囲拡大と管理の厳格化は、利用者にとってどれだけメリットがあるのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

悪夢へと近づきつつある
「住宅弱者の住」問題

 今回のテーマは、厚労省が管轄する「無料低額宿泊所」の範囲の拡大と、厚労省や自治体による管理が厳格化する可能性、そして他の選択肢が失われていく懸念だ。「無料低額宿泊所」は、戦後の混乱の中で、生活困窮者のための一時的な宿泊の場として規定されて現在に至っている、厚労省の施設である。

 施設は、いかに良心的に運営されていても、入所者のために最良の配慮がなされていたとしても、あくまでも施設であって住居ではない。世界の流れは、「施設は、小さくても良心的でも施設だからダメ」という方向に向かっている。人の暮らしは、あくまでも通常の「住まい」がベース。そこでの暮らしが支えられるべき。これが大きな潮流になりつつある。あらゆる場所でそれが現実になるまでには、まだ時間がかかるだろう。しかし、日本という国の名誉のために、逆行は避けるべきだ。

 ともあれ、現在の日本には「住める場所がない」という多数の人々が存在する。収入や資産がなかったり、刑務所入所歴があったり、障害や高齢によって生活に支援を必要としていたりする人々だ。そうした人々は、無料低額宿泊所で支援や管理を受けていたり、安価だが劣悪な居住環境に「そこしか選択肢がないから」という理由で滞在していたりする。期間は、数年にわたることが少なくない。生涯の終わりまで留まらざるを得ないこともある。その人々の存在がクローズアップされるのは、たいてい「火災で多数の死傷者が発生する」といった悲劇が発生した直後だけだ。

 この問題に対して、厚労省は2018年11月より、「社会福祉住居施設及び生活保護受給者の日常生活支援の在り方に関する検討会」を開催してきた。あまりにも狭く居心地の悪い「貧困ビジネス」の寮に対する規制の必要性や、入所が長期にわたって結果として入所施設に近いものとなることも多い現状を含め、2019年6月までに7回の検討が積み重ねられてきた。