ルネサスエレクトロニクスの呉文精社長兼CEOが株主総会で再任後、わずか3カ月で突如退任した。その裏には、成長軌道に乗り切れず、1~3月期、7年ぶりに赤字に陥ったことへの危機感が垣間見える。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)
ルネサスエレクトロニクスが異例の人事を発動した。6月25日、呉文精社長兼CEO(最高経営責任者)を6月末で“首”にし、後任にCFO(最高財務責任者)だった柴田英利氏を充てると発表したのだ。呉氏は3月20日の株主総会で再任されたばかりであり、わずか3カ月での電撃退任となる。
だが、2019年1~3月期の決算を締めてみると13億円の営業赤字に転落してしまったのだから、それも無理からぬ話だ(図1)。決算期の変更という特殊要因があるにせよ、同期間としては実に7年ぶりの赤字である。
ルネサスといえば、日立製作所と三菱電機、NECの半導体事業を源流とする半導体大手だ。
寄せ集め企業の宿命として、10年の発足当初から生産拠点や人員の重複に直面した。そこに東日本大震災や超円高が直撃。官民ファンドの産業革新機構(現INCJ)などの資金援助の下、壮絶なリストラを経て一時は完全復活したとすらみられていた。
ただ、ルネサスは成長軌道に乗り切れなかった。今回の赤字は、米中貿易摩擦による需要の低迷に加え、18年上半期に需要を見誤って在庫を大きく積み増してしまった影響が大きい。何しろこれで、半導体の売上高が前年同期比で19.4%も落ち込んでいるのだ。
需要減への対応が不得手であることはルネサス自身も自覚しており、5月には工場を一時停止して生産調整を図るという前代未聞の試みも行った。