【社説】米国の戦略的石油輸出Photo:picture alliance/gettyimages

 国際エネルギー機関(IEA)は10日、イランによる原油供給阻害の影響を緩和するため、加盟32カ国が戦略石油備蓄の中から計4億バレルを放出すると発表した。これは過去最大の放出規模だ。戦略石油備蓄はこうした目的のために存在している。しかし、米国の原油輸出も西側諸国にとって戦略備蓄の役割を果たしていることを、忘れてはならない。

 ホルムズ海峡を封鎖することで、イランは世界の石油供給の約20%分の輸送を停止させた。同国は商船に脅威を及ぼし、荷主の保険コストを法外な水準に上昇させた。また、米当局者らによると、イランは同海峡に機雷を敷設した。サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)は、供給の一部を紅海へのパイプライン経由に切り替えた。

 だが、中東から原油を輸入するアジアおよび欧州の製油所は、依然として深刻な供給障害に見舞われており、その影響は原油価格の上昇に反映されている。IEA加盟国の備蓄放出は混乱の緩和と価格抑制が狙いだ。西側諸国は、1970年代のアラブ諸国による石油禁輸措置を受け、こうした目的のためにIEAを設立した。

 しかし、IEAは近年、化石燃料反対派の代弁者となってきた。進歩派は、IEAによる世界石油・ガス需要の減退見通しを引き合いに出し、米産油量を制限する政策を推進してきた。幸いにも、彼らは米国の石油輸出を停止させることには成功しておらず、現在では米石油輸出が同盟国への供給混乱の緩和にも寄与している。

 欧州とアジアは、ポール・ライアン元米下院議長に感謝した方がいい。2015年にライアン氏は、1975年から続いていた原油の輸出禁止措置を解除する法案の成立を主導した。同氏はバラク・オバマ大統領(当時)と政治的取引を行い、再生可能エネルギー補助金の延長と引き換えに輸出解禁を実現させた。これを受けて米国内のシェールオイルの採掘は増加した。米メキシコ湾岸の製油所は軽質油であるシェールオイルの処理には適さないため、輸出が解禁されても国内供給が圧迫されることはなかった。