再度の休戦も、楽観はできず
米中の関係は時に親密さを装い、時にしっぺ返しをしながら混乱を続け、そのたびに景況感や市場を激しく揺さぶり続ける可能性がある。それゆえ、中国市場を専門とする投資家は対立の長期化に身構え、対立にかかわらず、あるいは対立のおかげで成長できるような企業を探している。
昨年12月のトランプ大統領と習近平国家主席の休戦合意に支えられ、MSCI中国指数は、年初から5月10日に貿易協議が決裂するまで14%上昇した。非難の論調が厳しさを増し、また米政府が重要な半導体やその他の部品、技術について、中国の最大手企業の一つであるファーウェイ(華為技術)との取引を制限したことで、同指数は年初の上昇分のほとんどを失い6月6日に底値を付けた。現在は、再度の休戦により投資家のマインドも改善し、MSCI中国指数は5月10日の水準近くまで回復した。大阪で開催された20カ国・地域(G20)首脳会議で、トランプ大統領はファーウェイに米国製品を売却することおよびさらなる関税発動を延期することに同意し、米中両国は交渉再開に合意した。G20後、MSCI中国指数は2%上昇した。しかし、貿易協議の合意が見えているわけではない。また、この対立は関税にとどまらず、むしろ世界の二大経済大国の間の長期的な対立となり、数十年もの長きにわたりビジネスとサプライチェーンを支えてきた世界秩序を変容させる恐れがある。
過去3年間で他のファンドの95%を上回るパフォーマンスを上げたマシューズ・チャイナ・ファンド(MCHFX、運用資産8億400万ドル)の共同マネジャーであるアンドリュー・マトック氏は、最悪のシナリオを検討している。その一つが、米国がより広範な禁輸措置を課し、中国がアンドロイドやマイクロソフト(MSFT)の基本ソフト(OS)のライセンスを取得できないようにし、これに対抗して中国が米国への輸出を制限する、禁輸競争のシナリオだ。
香港のJPモルガン・アセット・マネジメントで中国A株ストラテジーの共同マネジャーとして20億ドルを運用するレベッカ・ジャン氏は、最終的には貿易合意が締結されると予想しているものの、経済成長に依存しており、収益性がさらに影響を受ける懸念から、自動車メーカー株や機械メーカー株の保有を引き下げている。過去3年間で他のファンドの87%を上回るパフォーマンスを上げた、ティー・ロウ・プライス・アジア・オポチュニティーズ・ファンド(TRAOX、運用資産1億2100万ドル)のマネジャーであるエリック・モフェット氏は、昨年第4四半期の株価下落時よりも慎重なアプローチを取っている。同氏は、株価がより大きく値下がりするか、米中関係がより大きな改善の兆しを見せるまで、中国株の積極的な買いは控えるつもりだ。