財閥10社が牛耳る韓国経済
極端な賃上げは逆効果に

 小さな会社が世に溢れているということは、それだけ低賃金労働が社会に蔓延しているということでもある。高い賃金を払える大企業はほんの一握りなので、中小企業経営者は給料を上げる理由が見当たらないからだ。この負のスパイラルは韓国社会でも深刻な問題となっている。

「昨年韓国50人未満の中小企業の平均賃金は大企業の55%に過ぎない。賃金差が大きいうえに格差も拡大する傾向にある。一方、日本は過去20年間、中小企業の賃金が大企業賃金の80%水準を維持してきた。大卒初任給の場合、90%を上回る」(中央日報 18年12月5日)

 よくいわれることだが、韓国は日本の「格差社会」がかわいく見えるほどの「超階級社会」なのだ。経済は10大財閥のグループ企業が牛耳っているので、そこに就職をしない限り、永遠に「勝ち組」にはなれない。そのため、日本よりも激しい受験戦争・就職戦争が繰り広げられ、そこからドロップアウトした「高学歴ニート」のような無職の若者が100万人を超えている、と韓国労働研究所が公表している。

 つまり、韓国の「失業問題」の根っこには、日本人にはなかなか理解できない「超階級社会」と、日本よりも深刻な「労働者に対して中小企業の数が多すぎる」という2つの構造的問題があるのだ。このあたりの問題を、労働政策研究・研修機構の「国別労働トピック」(2018年12月)が端的にまとめてくれているので引用しよう。

「韓国労働研究院(KLI)のレポートによると、韓国の青年雇用問題の核心は、大卒以上の高学歴青年の就職難にあり、中小企業への就職忌避など人材需給ミスマッチに起因する就職難の割合が高い。これは労働市場の二重構造の深化により、内部労働市場と外部労働市場の労働条件格差が解消されていないためである。韓国の青年が大企業や公共企業の雇用に引き寄せられる現実をみると、労働市場の格差を解消することなしに、青年の雇用状況を改善することは難しい」

 この「労働市場の格差解消」を、文政権は極端な最低賃金の引き上げで実現しようとした。しかし、先ほども触れたように、この格差は「財閥」に象徴される韓国のいびつな社会構造に端を発している。そこに手をつけずに、帳尻合わせのように最低賃金を一気に引き上げてもうまくいくわけがないのだ。むしろ、日本よりもはるかに雇用に影響力のある中小企業経営者たちへ「宣戦布告」をするようなものなので、ただでさえ悪い失業率を輪をかけて悪化させてしまったのである。