こうした「反緊縮」の盛り上がりの底流には、90年代から世界を覆ってきた市場重視・「小さな政府」の新自由主義に対する反動がある。

 グローバル化やIT化で失業や格差が拡大する中で、財政による雇用創出や所得再分配の役割が重要性を増した。

 だが、「新自由主義は、財政危機を口実に緊縮を進めたから、社会サービスが削減され、国民はひどい目にあった。本来ならリベラル勢力が対抗すべきだったが、中道路線で一緒になって緊縮を進めた。それに対する怒りや現状を変えたい思いがMMT支持につながっている」と松尾教授は話す。

 松尾教授らも17日に、都内でケルトン教授を囲んで討論会を開く予定。

 政治的には全く異なる立場の保守とリベラルが、積極財政を主張しMMTで共鳴する構図だ。

財政赤字を「平時」で活用
景気過熱すれば増税で調整

 MMTは、財政による需要喚起を掲げたケインズ政策や、「デフレ脱却」で財政の役割を指摘したシムズ理論とはどこが違うのか。

 ケインズは、大恐慌の経験から、「不確実性」が強まると投資が十分に行われず需要が不足するので、政府が支出を拡大して有効需要を喚起し、民間の投資意欲を高めることを主張。マクロ政策で完全雇用を実現するのが、政府の役割とした。

 それまでの伝統的な経済学の考え方は、需要と供給を一致させるように価格が伸縮的に変化するので、完全雇用は市場を通じて達成される。政府は失業問題を考慮する必要はないというものだった。

 ただケインズ政策は、不況期の財政出動の後は、民間の投資が誘発されて成長が促進され、税収も回復するので、中長期的には財政は均衡するという考え方。この点では、「シムズ理論」も同じだ。

 これに対してMMTの場合は、不況期だけでなく、財政赤字を「平時」でも活用し財政主導で経済を回そうという考え方がにじみでる。この日の質疑でもケルトン教授は、「政府の債務残高は過去に政府が財政支出を税金で取り戻さなかったものの履歴でしかなく、それは民間で貯蓄されている」と、政府債務や財政赤字が膨らむこと自体には問題はないとした。

 MMTが強調するのは、(1)通貨発行権を持つ政府はデフォルトのリスクや財政制約はない、(2)財政赤字は民間の資産増であり民間への資金供給になる、(3)貨幣は税の徴収のために政府が流通させたもので、貨幣価値は政府の信用力で支えられている、(4)租税や公債は財源調達手段ではなく、金利や購買力を調整する手段――といった点だ。