「新規事業のプロ」として本格的な量稽古が始まる

 「新規事業の専門会社」であるエムアウトは、じつに野心的な会社でした。

 会社のビジネスモデルが、

 「自社の社員、自社の資金、自社のアイデアで事業を生み出し」
 「うまくいったら売却」
 「売却額と投資額の差分が、次の事業投資の源泉」

 というものでした。

 会社を、事業の入り口から見ると、すべての事業が新規事業で、新規の参入を検討中、もしくは参入したばかりという、赤字だらけの事業会社です。

 一方、出口から見ると、結局、作った事業は売ってしまうので、超ハンズオンのVC(ベンチャーキャピタル)に見える事業会社です。

 このじつにユニークなエムアウトでの経験が、「新規事業のプロ」としての本格的な量稽古の始まりでした。

 田口さんが、私がミスミに入社したときに言っていた、

 「我が国には、経理のプロや法務のプロはいる。弁護士が弁護がうまいのは弁護ばっかりやっているからだ。しかしながら、翻って我が国の新規事業を見ると、その事業がうまくいったら、事業責任者としてその事業とともに出て行ってしまい、2回ぐらい失敗したら二度とアサインされなくなってしまう。だから、常に新規事業の素人が新規事業を担っており、あらゆる企業で、おびただしい非効率がそこかしこに散在している。これではダメだ。だから、あんたはずっと新規事業だけをやるんだ」

 の話が、まさに、会社の構造として具現されていたのです。

 そして、この「実際に何度も事業を立ち上げる経験」に加え、さらには「いくつかの事業を同時に立ち上げる経験」もさせていただきました。