「新規事業立ち上げノウハウ」の「型化」に取り組む

 連続起業に加え、同時起業です。

 これは、
 「新規事業は十中八九うまくいかない」
 「なのに一分の一で成功を強いるとうまくいかないと思っているものまで、うまくいくと言ってしまう」
 「だから事業の生存確率を許容し、ピボットやギブアップを受け入れる構造にしておく必要がある」

 というような考え方に基づいた、新規事業の立ち上げ方でした。

 それに加えて、「新規事業立ち上げのノウハウ」を「型化」することにも取り組みました。

 「新規事業立ち上げのノウハウ」は、どうしても、「個別独自ノウハウが属人的に溜まりがち」です。

 なので、それを努めて可視化、組織で共有しようと工夫しました。

 新規事業の専門会社なので、その失敗も成功も含めて全ノウハウを会社のノウハウにしようという取り組みでした。

 失敗が重なったときには、「なぜこんなにも失敗ばかりするのだろうプロジェクト」を、たまにうまくいったときには、「なぜ今回はうまくいったのだろうプロジェクト」に取り組んだりしたのです。

 これもまた、ある時、田口さんから、

 「いくつもの新規事業を抱えているからと言って、いくつも事業をやっていると思うな。経理の担当者が3つの事業の月次決算を抱えているとき、私は3つの事業をやっています、とは言わないだろ。あんたは、新規事業しかやっていないんだ。だから、一つのことしかやっていないんだ。そう思えなくても、そう思うんだ。すべて共通だと思えば、やがて、本当に共通項が見えてくる。そうすることで、起業専業企業としての勝ち戦のポイントを見極めていくんだ」

 ということを言われたからです。

 しかし、これについては、「はい、分かりました」とは言いつつも、正直、心の奥底では「いくつもの新規事業を抱えているんだから、いくつもの事業をやっているとしか思えない」と思いながら格闘する日々でした。

 【18歩目】
 「仕事のプロ」は、成功パターンを「型化」しようとする。

守屋 実(もりや・みのる)
1969年生まれ。明治学院大学卒。1992年にミスミ(現ミスミグループ本社)に入社後、新市場開発室で新規事業の開発に従事。メディカル、フード、オフィスの3分野への参入を提案後、自らは、メディカル事業の立上げに従事。2002年に新規事業の専門会社、エムアウトをミスミ創業オーナーの田口弘氏とともに創業、複数の事業の立上げおよび売却を実施。2010年に守屋実事務所を設立。設立前および設立間もないベンチャーを主な対象に、新規事業創出の専門家として活動。自ら投資を実行、役員に就任、事業責任を負うスタイルを基本とする。2018年4月に介護業界に特化したマッチングプラットホームのブティックスを、5月に印刷・物流・広告のシェアリングプラットホームのラクスルを2社連続で上場に導く。