これまで50の新規事業(企業内起業17回、独立起業19回、週末起業14回)に携わってきた守屋実さんの初の著書『新しい一歩を踏み出そう!』が5月15日にダイヤモンド社から発刊されました。守屋さんは、大学在学中から現在に至るまで、一貫して新しい事業だけをやり続けてきたという稀有なキャリアの持ち主。守屋さんの実績を表す一端といえるのが、創業に参画した2社が昨年上場したこと。2018年4月に介護業界に特化したマッチングプラットホームのブティックスを、5月に印刷・物流・広告のシェアリングプラットホームのラクスルを2社連続で上場に導く。本連載は、守屋さんのこれまでの様々な経験を踏まえ、主に若手ビジネスパーソンに向けて「仕事のプロ」になるための具体的な方法を伝授していきます。

連続起業と同時起業を並行して走らせる

「仕事のプロ」としての3回転目の挑戦がスタート

 「来月末でいいか?」

 ある日、唐突に、田口さんからこう聞かれました。

 当時、田口さんはミスミの社長を、『V字回復の経営』などの著作で有名な三枝匡さんに引き継ぎ、会長になっていたのですが、すでに「ミスミの次」を構想されていました。

 新規事業だけを手掛ける新会社「エムアウト」を設立したのです。

 私が聞かれたのは、この「エムアウト」へ転職するという話でした。

 来月末というのは、私が「ミスミを退職し、エムアウトに入社する日」のことでした。

 じつはこの話、田口さんと三枝さんの間で話が済んだあとに、聞かされたのでした。つまり私は、自分の転職を田口さんから聞いて知ったのです。

 もちろん、まったく本人が知らない、縁もゆかりもない話だったわけではなく、いくぶんの伏線はありました。

 田口さんが考えていた「コンテンポラリーアートのEC事業」について、個人的に何度か田口さんとブレストをさせていただいていたのです。

 ただ、それでも、転職の声掛けをしていただけるとは思っていなかったので、とても驚き、かつ、とても嬉しかったことを覚えています。

 エムアウトは、ミスミとはまったく関係のない独立会社で、創業当時、ミスミからの転職者は私だけでした。しかも、取締役としての参画だったからです。

 これが「仕事のプロ」としての3回転目の挑戦であり、初めて企業経営に携わることになりました。