消費者庁が入る霞が関の合同庁舎。措置命令の5日後に長官が交代し、「駆け込み処分だったのでは」との疑念を抱く製薬業界関係者もいる消費者庁が入る霞が関の合同庁舎。措置命令の5日後に長官が交代し、「駆け込み処分だったのでは」との疑念を抱く製薬業界関係者もいる Photo by M.T.

 消費者庁から、「マスクの表示の根拠を示してほしい」と、問い合わせがあったのは2018年12月。同月中に大正製薬担当者は消費者庁担当者と面談し、19年1月に根拠となる六つの試験データを提出した。一定時間の照射で99%以上が不活性化した抗ウイルス試験、濃度が98.8%以上低減したスギ花粉試験――などだ。しかし消費者庁は納得せず、大正製薬担当者は3月に弁護士を伴って消費者庁を再度訪問して説明した。

 逆に消費者庁は6月、「白色蛍光灯を48時間照射する独自の試験をしたが、光触媒マスク片を入れた容器内の二酸化炭素は増加しなかったので有害物質が分解されなかったと理解した」と大正製薬に説明。大正製薬は「試験デザインが不適切」「我々のエビデンスに対する反証になっていない」「そもそもパブロンマスク365は有害物質が二酸化炭素に変わるとは表示していない」などと反論したが、消費者庁は7月4日、表示の取りやめなどを求める措置命令を出した。

 消費者庁はダイヤモンド編集部の取材に、「判断理由の詳細や経緯は言えないが、法と証拠に基づいて判断した」と説明した。

4社一斉の措置命令のきっかけは「海老蔵マスク」か

 パブロンマスク365シリーズは13年発売だ。なぜ、5年以上も経過してから、消費者庁は問題視したのか。

 光触媒マスクを販売する、あるいは販売していた他3社が大正製薬と同じタイミングで消費者庁から措置命令を受けている。一部業界関係者が「目を付けられるきっかけになったのではないか」と指摘するのは、そのうちの1社、DR.C医薬が18年から販売していた「花粉を水に変えるマスク」シリーズだ。歌舞伎俳優の市川海老蔵さんを広告に起用していたことから、通称、「海老蔵マスク」で知られている。

 このマスクは光触媒を進化させたというハイドロ銀チタンテクノロジーを使用。「医師が考えた新しい発想のマスク」をサブタイトルに打ち出し、電車内広告などで大々的にアピールしていたが、発売当初から「水に変わる学術的裏付けがあるのか」などと、一部消費者から疑問の声が上がっていた。措置命令を受けてDR.C医薬はホームページ上で、「表現が事実と異なっていると積極的に事実認定されたものではありません」としながらも、「厳粛に受け止め、一層適正な表示に努めて参る所存です」とのコメントを出した。