一方、Aさん(36歳男性/未婚)の場合。彼は遅咲きのミュージシャンで、最近いい感じの仕事が増えてきて、これから売り出されるであろうという気配を漂わせ始めた。彼に年金のことを聞いてみると、

「払っているけど、あまり深く考えたことはない。老後にお金が必要になるかもしれないが、それを心配しなくていいくらい今のうちに稼げばいいんだ」(Aさん)

 と意欲をみなぎらせた。彼は生活臭がある人で、いつも何か(主にお金)に苦労しているような印象があるが、学校も奨学金で出たし、お金の問題には比較的リアルに向き合う人生を送ってきている。諸事につけて準備がいつも周到な性格でもある。

 その彼が年金については上記の発言である。年金と具体的に向き合っているとは言い難い。これは、老後について楽観視していると見ることもできるが、それを仕事に向かうモチベーションにしているような節もある。「将来の不安を払しょくするために今がんばらなきゃ!」である。苦労しながらも、ここまでやってこられた自負もあるはずだ。筆者のスタンスが「なんとかなる」なら、Aさんは「なんとかなるようにどうにかする」といえよう。

あえて財テクはしない
あるミュージシャンの矜持とは

 Bさん(43歳男性/既婚)は売れっ子のミュージシャンで、若い頃からそれなりの注目を集めてきたが、仕事は30歳を過ぎたあたりから軌道に乗り始めた。推定年収は軽く1000万円を超え、現在界隈ではもはや安泰といっていい地位を確立しており、しかし音楽を追究する姿勢をサビさせていない、本来のミュージシャンとはかくあるべきと思わされる人物である。