リチウムイオン電池は複雑な工業製品だ。電化製品の一般的な部品とは訳が違う。この不都合な真実は、電気自動車(EV)の将来に続く道の大きな障害となっている。電池のコスト削減はEV業界にとって喫緊の課題といえる。電池はEVのコストの大きな部分を占めており、マッキンゼーによるとその割合は35~45%。コストが下がらない限り、多くの消費者は引き続き従来型エンジンで走る価格の安い自動車を選ぶため、メーカーは世界三大市場に入る欧州連合(EU)や中国が定める厳しい二酸化炭素(CO2)排出規制を満たすことができないだろう。そうなれば多額の罰金に直面する。自動車市場の規模で3位の米国では、ドナルド・トランプ大統領がオバマ政権時代の排出規制を緩和しようとしている。だがデトロイト勢は基準を緩めるわけにいかない。全米で販売される車両は、最も厳しいカリフォルニア州の規制に影響される可能性が高く、自動車メーカーにとっては欧州や中国の事業も懸念される。米フォード・モーターは今月、欧州の排出規制問題に対処するため、独フォルクスワーゲンとプラットフォームの共有で合意した。一方、欧州自動車大手のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は5月、欧州でEV開発を先導するルノーとの合併を模索したが実現できなかった。