米国に替わり、21世紀の「自由貿易」を推進する日本の役割とは
「アメリカファースト」で自由貿易の危機が叫ばれるなか、日本が果たすべき役割とは(写真はイメージです) Photo:PIXTA

守るべき理念とされていたが
理念だけでは実現しない自由貿易

 自由貿易という言葉には、それを否定することが憚(はばか)られる響きがある。先進国、特に東西冷戦時代に西側先進国と呼ばれた国では、自由と民主主義に絶対的な価値があり、自由貿易は制度というより守るべき理念であった。

 貿易によって国境を越えた競争が促進されれば、それぞれの国で競争力を持つ分野に生産が特化され、世界全体の成長力が高まる。グローバルな視点に立てば、自由貿易は推進すべきだ、となる。

 しかし、自由貿易という理念に賛同しているだけでは自由貿易は実現できない。実際の自由化交渉においては各国の損得がまず優先される。第2次世界大戦後に自由貿易を推進した米国ですら、日本からの輸出が増加し、対日赤字が拡大すると、日本に対して保護主義的対応を強要してきた。WTO(世界貿易機関)による自由貿易交渉も加盟国間の意見対立でなかなか前に進まない。

本音では反対と考える人も
自由貿易は強者の論理

 本音では「自由貿易は強者の論理だから反対だ」と考えている人は少なくない。自由貿易では競争力の高い分野で生産が拡大する一方、低い分野では生産が縮小し撤退を迫られる。競争力の低い分野から高い分野に労働力が移動するとしても、衰退分野で働く人は所得が減ったり、職を失ったりすることが多いだろう。

 自由貿易によって雇用不安や所得の減少が起こるのであれば、弱い産業を守るための保護関税や競争力を高めるための補助金政策など、保護主義的政策をとる国が出てきてもおかしくない。また、国ごとに強い分野、弱い分野はまちまちであり、すべての国が納得するように貿易自由化交渉を合意に持っていくのは至難の業だ。