ピンハネ額増加で
激怒したドライバーが殺到
黒山の人だかりが車道を埋め尽くし、人の渦に巻き込まれた車両が立ち往生する。渦の中心では一般市民と当局の複数の人間がもみ合っている。ここに向けてペットボトルなどのモノがビュンビュンと投げつけられる。一面に響きわたるのはウワーッという人の怒号だ。
これは中国の友人・趙さん(仮名)から送られてきた動画だ。「今、中国の物流ドライバーの間でこの映像が拡散している」という。
なるほど、よく目を凝らしてみると、この映像に写っているほとんどがドライバーと思しき壮年の男性だ。建物前の敷地は駐車場なのだろうか、運送用と思しき車両が数台止まっている。制服を着ているのは警察だろうか。物流会社を相手に抗議する市民を当局が抑え込んでいるシーンのようだ。
趙さんは「場所は『貨拉拉(フオラーラー)』の本社がある深セン。“ピンハネ額”が増えて、配達請負人のドライバーたちがブチ切れたんです」と説明する。
深センでは、「貨拉拉」のアプリのアップグレードをきっかけに、ドライバーの収入から差し引かれる金額が増えたことから、不満が爆発したという。6月、同様の騒ぎが上海でもあったようだ。
「貨拉拉」とは“物流版ウーバー”といわれる、輸送専用のネット予約アプリだ。香港で開発されたアプリだが、2014年以降、100を超える大陸の都市で普及し、ワゴン車や貨車などの登録ドライバーは400万人、個人や法人のユーザーは2800万人を数えるまでに成長した。広東省深セン市に本社を置く深セン依時貨拉拉科技有限公司は、中国のユニコーン企業のひとつだとも言われている。
上海で商売をする李さん(仮名)も「貨拉拉」のユーザーのひとりだ。小売業を営む李さんは、これまで運転手を雇って配達業務をこなしてきたが、今年からこのサービスに乗り換えた。その理由は圧倒的な安さだった。