ベンチャー企業なぜ、大企業とベンチャーの協業はうまくいかないのか Photo:PIXTA

「オープンイノベーション」は一時バズワードとして盛り上がったが、今ではすっかり常識となった。デジタル化が進み、すべてがつながる現代にあっては、すでに自社商品だけではサービスが完結しない。他社、しかもこれまでお付き合いしていた企業とは違う領域の会社との「協業」が避けては通れない時代になっている。さらには、その相手も伝統ある大手企業ではなく、若くて勢いのあるベンチャー企業(より今風にはスタートアップというべきか)が当たり前になってきた。

新進気鋭のベンチャーと協業!
「何かすごい」ことへの淡い期待…

 企業には自社のビジョンと戦略があり、それに則った形での具体的な商品やサービスのイメージが生まれる。その際に、自社では供給・調達できない部分が出てくる。その専門分野を担う企業を探し、自社の足りない部分を補完してもらえるようなパートナーシップを組む――昔の経営の教科書風に言えば、これが協業だ。現在でもこうした方法を採る場合もあるが、あまり話題にならない。

 商品やサービスのイメージを具体化する時点で、自社だけで知恵を絞っていては、従来の思考の枠から出ることができない。そこで、自社にない知恵を出してくれそうなところとアイデア出しの段階から一緒に考え、ともに“ウィン・ウィン”なビジネスを実現しようというのが現在の協業のイメージである。

 したがって、協業相手にある特定の技術を求めているというよりは、一緒にやると「幸せな未来」をもたらしてくれそうな会社と組もうとする。その結果、ネットや雑誌で取り上げられた、最新の技術を持っている(と喧伝されている)、弁舌さわやかで賢そうで、笑顔が魅力的な経営者がいて、立派な成功(と見なされる)事例を持っている少数の企業に、協業依頼が殺到する。それも「なんか良さそうだから、唾をつけておけ」といった会社の偉い人のつぶやきがきっかけだったりする。