なぜ2030年代の前半まで
混雑緩和対策がかかるのか?

 車両編成を増やすためには、駅の改良工事をしなければならない。つくばエクスプレスは最大10両編成に対応するために、大規模改良工事が困難な地下駅や高架駅では、ホームや車両留置線を延長できる空間をあらかじめ確保した設計にしているため、工事自体に大きな問題、障害はない。しかし終電から始発までの数時間のうちに、通常のメンテナンスと並行して行わなければならないため、完成は2030年代前半の予定だという。

 新線建設や立体交差化を除けばまれに見る長期的な輸送改善計画であり、利用者からはもっと早い完成を望む声も寄せられているが、背景には深夜の作業時間確保以外にもいくつかの理由がありそうだ。

 ひとつは、そもそも8両編成化は「1時間の運行本数を25本に増強」の次を見据えた施策であり、当面は増発で混雑率に対処可能であるということだ。つくばエクスプレスは予想を上回るペースで黒字化を達成したとはいえ、経常利益は約60億円で、いまだ多額の借入金・未払い金を抱えている状況だ。

 8両編成化に必要な費用は、駅ホームなど地上設備の改修費用約360億円と、車両の調達費用(1両あたり約1億5000万円)だ。現在、3ヵ年の中期経営計画(2018~2020年度)で合計300億円の設備投資を計画している企業だから、この規模の資金の調達自体に問題はないはずだが、開業15年を迎えて設備の更新・修繕箇所が増えてくる時期だけに、設備投資はできるだけ平準化したいのが正直なところだろう。

 その意味で、先行して着手するメリットが大きいのはホームの8両編成対応工事である。また、既に一部の混雑駅で実施されているように、ホームを延長して上り・下り列車の停車位置をずらすことで、ホーム上の旅客を分散し、混雑を緩和できる効果もある。

 逆に集中せざるを得ないのが車両調達のタイミングだ。設備改修工事の完了まで受け入れることができず、保管しておく場所もないので、必然的にサービス開始直前にまとめて車両を導入することになる。また、一括して発注・製造すれば単価が下がるメリットもある。