4月3日、読売新聞夕刊が報じた、東京の地下鉄新線計画。再選がかかっているためか、前のめりな小池百合子知事だが、利用人数がさほど見込めないなど、実現にはいくつかの疑問符もつく。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
副都心線に次ぐ地下鉄新線が
東京に建設される…?
3日の読売新聞夕刊が「東京都がオリンピック後に新しい地下鉄を整備する方針を固めた」と報じた。記事によると新線は、銀座地区からりんかい線国際展示場駅までの約5キロを走行し、築地市場移転跡地、晴海・勝どき地区、豊洲市場の周辺に駅を設置する予定。総事業費は約2500億円を見込んでおり、都は今年度中に具体的な整備計画を取りまとめ、10~20年以内の開通を目指すという。
5日の定例会見で記者から問われた小池都知事は「整備するという方針は固まったものではない」としながらも、「都心と臨海部のアクセス強化の重要性については認識している」として、構想段階にあることを認めた。
東京の地下鉄全13路線の整備計画が出そろったのは1972年のこと。それから約40年間、「14号線」以降の路線が追加されることはなかったが、2014年2月に急浮上したのが中央区の臨海部地下鉄構想であった。都心回帰の牽引役である中央区の人口は、1997年の7万2000人から20年で2倍以上に増加。さらに今後は、築地市場跡地や、東京オリンピック後の晴海の選手村跡地など大規模再開発計画も待ち受けている。
2016年4月に公表された、交通政策審議会答申「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」では、臨海部地下鉄は単体では「盲腸線(起点・終点が他の路線に接続していない路線のこと)」となり事業性(採算)に課題があるが、つくばエクスプレスの東京駅延伸と一体的に整備すればで解決可能であるとして、計画目標年次の2030年に向けて整備を検討すべき地下鉄構想のひとつに「格上げ」された。
とはいえ、臨海部地下鉄構想はまだ検討が十分とは言い難く、事業性以外にも解決すべき課題は多岐にわたる。東京都が2018年度に新設した「鉄道新線建設等準備基金」の整備対象6路線にも含まれなかったことからも、実現には相当の時間がかかると思われていただけに、東京都が前のめりな姿勢を示したのは大きなサプライズであった。