「髪型がまだマシなトランプ」だけではない
ボリスの知られざる別の顔

 ボリスとはどんな人物か。よく知られている「ボリス像」は、奇抜な言動で物議を醸し、「髪型がまだマシなトランプ」と揶揄され、なにをしでかすか分からない「ポピュリスト」だ。

 だが、ボリスには別の顔がある。ボリスは、ロンドン市長として五輪を成功させた。この「実務家」としての「ボリス像」に関して、私が学生とともにロンドン市を訪問した際に、彼がロンドン市長として実施していたアプレンティスシップ・プログラム(徒弟制度をモデルにした職人養成制度)などの雇用・職業訓練政策を調査したことを紹介した(本連載第43回)。ボリスには間違いなく、「優れた実務家」としての顔がある。

 首相となったボリスが、ポピュリストの顔を見せるのか、実務家の顔を見せるのか、ふたを開けてみないと分からない。ただ、仮にボリスがポピュリストだとすれば、彼が政権を担当するのはいいことだと思っている。

 というのも、ポピュリズムの広がりを止めるには、一度政権を担当させることだと考えるからだ(第198回)。極右ポピュリストが主張する「移民排斥」「保護主義」や、極左ポピュリストが訴える際限のない「減税」「バラマキ」は、コアな支持者だけを相手にしていればいいときは、歯に衣着せず気持ちよく訴えることができる。

 だが、政権を獲ったらそう簡単にはいかなくなる。政権担当の現実を知れば、ポピュリストはとたんに勢いがなくなる。極端な政策は次第に穏健化することになり、普通の中道政党になる。コアな支持者は期待を裏切られたと去り、弱体化していくことになるのだ。

 さらにいえば、ポピュリストが政権を担当したときには強力な「改革者」に化けることもある。例えば、国民の大多数が賛成ではなかった「郵政民営化」を断行した小泉純一郎元首相や、大阪府知事・市長として、さまざまな行政改革を実現した橋下徹氏だ(第107回・P.3)。「不人気だが、必要な政策」を断行してなお、支持率が落ちないほどの大衆人気を誇ったからこそ、誰も手を付けられなかった大改革ができたといえるのだ(第98回・P.5)。