3年前、EU離脱をめぐる国民投票で「離脱派」が勝利した時、ボリスが首相になるべきだったのだ。だが、保守党党首選には出馬しなかった(第135回)。メイ政権の外相に就任したが、EU離脱交渉が困難な状況になると、逃亡するように辞表をたたきつけた(第192回・P.3)。

 ボリスは「離脱派」の中心でありながら、離脱の責任を取ることなく、今日に至っている。その結果、ボリスに対する離脱派からの「期待」も残っている(第198回・P.4)。これが、「離脱派」「残留派」がお互いを正しいと信じて、歩み寄れない一つの理由となっている。

 EU離脱が成功しようが失敗しようが、「離脱派」「残留派」の二つに割れた英国民が納得して再び一つになるには、ボリスが首相としてEUとの交渉の矢面に立って、全責任をとってどう離脱するのかを決めるしかないのだ。

「合意なき離脱」が起きても
英国は経済力・政治力を維持できる

 「合意なき離脱」は、英国経済・社会に甚大な悪影響を与えるのは間違いない。イングランド銀行の試算では、関税手続きの煩雑さなどで経済活動が停滞し、国内総生産(GDP)が最大で1年以内に8%縮小(5.7兆円の減少)し、英国内にある企業の10分の1が倒産するという。また、外資系の金融業や製造業にとって、英国に欧州の拠点を置くことが不利益になる。今日の利益を考えるならば、EUに拠点を移すのが合理的なのは明らかだ。

 しかし、短期的な混乱は避けられないとしても、中長期的にみれば、たとえ「合意なき離脱」であっても、英国は経済力・政治力を保つことができるのではないかと筆者は考えてきた。英国は、「英連邦」という巨大な「生存圏」を持つからだ。

 この連載では、今後の国際社会について、世界が国境を越えて全ての国が相互依存を深める「グローバル化」から、それぞれの国が「生存圏」をどう確立するかを考える「ブロック化」の時代に変わっていくと論じてきた。そして、この時代に生き残れる力を持つのは、軍事、経済、資源において自立した「生存圏」を築ける国家・地域で、具体的には米国と英国(英連邦)、ドイツ(EU)、ロシア、中国を挙げた(第149回)。

 そして、英連邦には、「資源大国(南アフリカ、ナイジェリア、カナダ、オーストラリアなど)」「高度人材大国(インド)」「高度経済成長している新興国(東南アジア)」などが含まれる。英連邦を再構築しつつ、離脱後の最初の5年間を乗り切れば、その後は「巨大な生存権」を築ける可能性がある(第134回)。