発売直後から話題沸騰の『ニュータイプの時代――新時代を生き抜く24の思考・行動様式』の刊行を記念して、著者の山口周氏と、『アフター・デジタル』等のベストセラーを多数もつ、IT批評家の尾原和啓氏との対談イベントが実現。未来を見通す慧眼に定評のある2人が、今起こっている変化の本質を解説しつつ、この先の生存戦略について語る。パタゴニアとモレスキンはなぜ世界中で売れるのか? 一方で、コクヨはなぜモレスキンを作れないのか?(構成:山田マユミ)
※対談記事1はこちら

役に立つより「意味がある」じゃないと
これからは生き残れない!

尾原:アニメの『ガンダム』では、ニュータイプを「重力に縛られない人」としていますが、ニュータイプの生き方を、どのように捉えていますか?

山口:新刊でも詳しく書いていますが、「役に立つ」「意味がある」の2軸で考えると、わかりやすいと思います。

山口周(やまぐち・しゅう)
1970年東京都生まれ。独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。ライプニッツ代表
慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科修了。電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。著書に『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』『劣化するオッサン社会の処方箋』『知的戦闘力を高める 独学の技法』『武器になる哲学』など多数。神奈川県葉山町に在住。

 横軸が「意味がある/ない」、縦軸が「役に立つ/立たない」。世の中にある組織や企業、そして個人も、「役に立つ」か「意味がある」かのどちらかでしか、世の中に居場所を与えられません。

 日本はずっと、「役に立つけど、意味がない」分野で戦ってきました。家電メーカーや自動車メーカーが典型で、トヨタの車のほとんどが、「役には立つけど、意味がない」という領域に属してしまっています。

 この領域は、価格にして100万円から300万円までで入手しやすく、移動手段としては役に立つんです。ただ買う人にとっての生きがいとか、乗っていることで人生が変わるかといったものではないですよね。

 ところが欧州メーカーは「意味が価値」の車ばかりです。ベンツやBMWなどのドイツメーカーは、「乗る意味」という感性価値を与えています。

 また、イタリアのフェラーリ、ランボルギーニなどの、数百馬力のエンジンを搭載したスーパーカーは、日本の法定速度からすれば完全にオーバースペックです。ですが、決して日常使いの車とは言えないのに、1000万~数億円の「意味がある」わけです。つまり、役に立つレベルが低い車の方が、値段が高いんです。

尾原和啓(おばら・かずひろ)
IT批評家、藤原投資顧問、書生
1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab、取締役)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業に従事。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザーなどを歴任。著書に『どこでも誰とでも働ける』など多数。

 例えば、トヨタのPBR(株価純資産倍率)は「1」しかない、つまり株価資産の合計額と時価総額が同じです。一方で、テスラはPBR100。高い値付けがされている。これが意味することが何かと言うことです。

 極論すると、テレポーテーション(転送)装置が出てきたら、車をつくる自動車メーカーは必要なくなりますが、フェラーリはそうなっても価値が下がらないんですね。なぜなら、転送装置とはまったく違うマーケットで「意味がある」存在になり得ていますから。

 少し話はずれますが、この話をある企業の人事担当者に話したら、人の成長と同じですねと指摘されました。新卒はすぐには役に立てないし、意味もないけれど、研修をして少したつと役に立つようになる。

 さらに成長すると「あの人がきたら大丈夫だ」というくらい意味が出てくる。最終的に社長はExcelを使えないけど、意味があるから十分だということになる。

尾原:赤ちゃんも、役に立つ存在とはいえなくても、親からすると「意味がある」存在というところから始まりますもんね。